「ピアノを習いたい、でもなかなか続けられる気がしない…」。大人になってからピアノを始めたいと思っても、仕事や家事、子育てなど、何かと時間を取られることが多く、気がつけば後回しになってしまうこともあるのではないでしょうか。そんな状態が続くと、「どうせ思い立っても三日坊主に終わるんじゃないか」という不安や、「子どものころに始めていたらよかったのに」という後悔めいた気持ちも顔を出すかもしれません。
実は、大人が何か新しいことに挑戦するとき、意外なほど効果を発揮するのが「目標の明確化と見える化」です。簡単に言えば、「いつまでに何をどこまでできるようになるか」を、見た目にも分かる形で設定し、進捗を記録していくというやり方です。これによって、自分の中で「ゴールが近づいている」感覚を得やすくなり、最初の一歩を踏み出しやすくなるだけでなく、途中で挫折しにくくなるメリットがあります。
ここでは、「大人がピアノを習うときに、目標をどう設定し、どう“見える化”すれば効果的か」を、具体的な方法と合わせて紹介していきます。この記事を読み終わる頃には、「なんだ、こんなふうにすればやれるかも」という手応えを感じ、実際に行動を起こしやすくなっているかもしれません。
大人だからこそ、目標を見える化して始めよう
子ども時代の習い事では、先生や親が目標を示してくれて、こまめに進捗を確認してくれたかもしれません。ところが大人になると、ピアノを教えてくれる先生がいても、「いつまでにこれが弾けるようになりましょう」と厳密に管理してくれるケースは少ないもの。自主性が求められることが増えます。自主性があるのは良い面も多い反面、「忙しいからまあいいか」と、先延ばししがちになるのも事実。
だからこそ、どんなふうに目標を設定し、それを普段から目で見える形に落とし込むかが、モチベーションを維持するうえで大切なポイントになります。わざわざ大げさな仕組みを作らなくても、手書きのリストやスマホのメモ機能を使って、ちょっとしたゴールと進捗状況を記録していくだけで、意外なほど効果があります。
1. 「具体的な目標」を設定すると、行動が起こしやすくなる
「いつか○○が弾けるようになりたい」から「この曲を○月までにここまで弾く」へ
大人が「ピアノを弾けるようになりたい」と思うきっかけはさまざまです。昔から憧れた曲がある、子どもの頃に挫折したリベンジをしたい、有名なクラシックを弾いてみたいなど。しかし、漠然と「ピアノを弾けるようになりたい」だけでは、実際の行動に結びつきにくいものです。
そこでおすすめなのが、「この曲を○月までに、片手ずつでもいいからここまで弾ききる」というふうに、期日とゴールを具体的に結びつけること。大事なのは、“完璧に弾く”よりも“ここまでやってみる”というハードルを下げて設定することです。片手だけでメロディーを拾う程度でも、それを目標にしておくと達成しやすく、成功体験が積み重なります。
「1曲仕上げる」は意外と魅力的なモチベーション
例えば、映画やドラマのテーマソングなど、馴染みのある曲を1曲とにかく通せるようにする、というのは良い目標になりやすいです。大切なのは、長さや難しさにこだわりすぎないこと。フルバージョンが難しければ、「サビだけ完コピする」でもいいのです。大人にとっては、少しの達成がすでに大きな喜びにつながります。
2. 小さなステップに分割して、達成感を得やすくする
ステップを可視化するメリット
大人はどうしても、勉強や仕事において完成度を求められる場面が多いので、趣味でも「どうせやるなら最後まで弾けるようにならなきゃ」と考えがち。しかし、ピアノの学習では、小さく分割したステップを一つひとつクリアしていくことが上達の近道になります。
たとえば、「1ページ目のメロディだけ」「1週間後にはテンポを遅くしてでも通す」「もう1週間でフレーズを繰り返して安定させる」といったように、細かく区切っていくのです。これを文字や表などにして「見える化」すれば、どこまで進んだかが明確になります。
「フレーズAは弾けるようになった!」という達成感
ピアノ学習では、曲の最初から最後まで一気にスムーズに弾けるようになるのは時間がかかります。だからこそ、最初からすべてを目標にするよりも、「このフレーズだけは確実に」という小さな区切りを作ることで、達成感を得やすくします。フレーズAができれば「よし、次はフレーズBに進もう」とモチベーションを保ちやすいです。
3. “見える化”は紙でもデジタルでもOK
紙のチェックリストやカレンダーの活用
見える化といっても、難しく考える必要はありません。たとえば「毎日練習したらカレンダーに丸をつける」とか、「1曲をいくつかのパートに分けて、弾けるようになった部分にチェックを入れる」とか、シンプルなやり方で構いません。紙の手帳やノート、壁に貼ったカレンダーなどに丸やチェックをつけていくだけでも、進捗が目に見えて分かるので「あともう少しでここまで行ける」という気持ちになれます。
スマホやアプリで目標管理する
忙しい大人には、スマホのタスク管理アプリなどを利用する方法もおすすめです。たとえば「今週はこの曲のイントロを片手で弾く」「来週は右手と左手を合わせる」といった形でタスクを設定し、完了したらアプリ上で“クリア”にする。日々の生活スケジュールが詰まっていても、スマホを開けば自分の目標をすぐに確認できるので、ふとしたタイミングで「今日はあと5分だけやっておこうかな」という気持ちになりやすくなります。
気分が上がるカラフルな工夫
大人とはいえ、シールを貼ったり、カラフルに色分けしたりすると、達成感が増す場合もあります。たとえば「フレーズごとに色の付箋を貼っておく」「弾けるようになった部分だけピンクに塗りつぶす」といった工夫は、子どもの頃と同じようにモチベーションを上げてくれることがあるのです。
4. 練習時間や頻度も“見える化”で持続力UP
「1日○分」や「週に○回」の目標を明確に
ピアノの上達には、「いかに鍵盤に触れる回数を増やすか」が大事だと言われます。とはいえ大人は、毎日長い時間を確保するのは難しいことも多いでしょう。だからこそ、「最低でも1日5分は練習する」とか「週に3回はピアノに触る」といった目標を掲げて、練習頻度を可視化するのがおすすめです。
「実際にどれくらい弾いたか」を記録して振り返る
たとえば、スマホのタイマーで計測しながら練習して、その時間をカレンダーにメモしていく。忙しい日はゼロ分になるかもしれませんが、目に見える形でゼロが続くと「さすがに今日はやろう」と思えることもあります。逆に、「意外と先週は合計1時間も弾いてたんだ!」と前向きな気持ちになれる場合もあるでしょう。自分がどれだけ努力したかを“見える化”することで、次のステップへ進むエネルギーを生み出せます。
5. 「進捗が見える」からやる気を失いにくい
ゴールに向けて近づいている感覚
大人になってから勉強や楽器を練習すると、「本当に上達してるのかな」と疑問に思う時期が多かれ少なかれ訪れます。そこで練習記録や小さなゴールを可視化しておけば、過去の自分と比べて確実に進んでいる実感を得やすくなります。これがあるかないかで、モチベーションの差は大きいのです。
「あともうちょっとだから頑張ろう」という気持ち
目標をざっくり「1曲弾けるようになる」だけで捉えると、途中で挫折しやすくなります。しかし、「あとこの4小節を覚えれば1ページ分が通る」など、ゴールが小刻みに設定されていると、「もうちょっと頑張ろうか」と思いやすくなるもの。人はゴールが近づくほどやる気を出しやすいという特徴がありますから、それを活かしていくイメージです。
6. 大人ならではの工夫:周囲にも目標を共有する
家族や友人に宣言してしまう
「来月までにこの曲のサビだけ弾けるようになりたいから、週3回は練習するね」と家族に伝えておくと、家事の分担や音出しのタイミングなどを協力してもらいやすくなります。また、友人に「いまピアノ始めてるんだ」と言っておけば、進捗を聞かれることも増え、自然とやる気が高まる効果があるでしょう。これも一種の“見える化”と言えるかもしれません。
SNSでの記録や報告もおすすめ
もし抵抗がなければ、SNSやブログなどで「今日の練習記録」を簡単に投稿する方法もあります。大々的に公開しなくても、鍵付きアカウントやピアノ学習者同士のコミュニティで報告し合うだけでも、自分の取り組みが外から見える形になるので、サボりにくくなります。さらに、同じ境遇の人からコメントやアドバイスをもらえれば、孤独感を減らせて続けやすくなるでしょう。
7. “見える化”に挫折しそうになったら
一時的にペースダウンしてもOK
人によっては、仕事や家庭の事情で数週間まったく練習できないこともあるでしょう。そのとき、目標に沿っていない自分を見るのがつらくて、記録をつけるのをやめてしまいたくなるかもしれません。でも、一時的にペースダウンしてもまったく問題ありません。忙しい時期が終わったらまた再開すればいいし、記録も一旦止めて後から再開するだけで十分です。
目標を柔軟に変更する
設定した目標が負担になりすぎていたら、思い切って「もう少し簡単な曲に変える」「期限を延ばす」「練習の頻度を下げる」といった調整をするのも手です。目標はあくまで自分を鼓舞するためのもの。厳しすぎるゴールはモチベーションを折ってしまいかねないので、柔軟に変えていいという前提で取り組むのが長続きのコツです。
8. 大人だから楽しめる「目標勾配」の醍醐味
達成までの道のりが実は面白い
子どもが習い事をする場合、親が「練習しなさい」と言ったり、先生から宿題を出されたりすることも多く、半ば強制的に続けるケースもあるでしょう。大人の場合は、自分の意思で始めているからこそ、「あれ? ちょっと弾けるようになってきたかも」という小さな手応えが何倍も嬉しく感じられます。目標を見える化しながら達成に近づくたびに、達成感を噛みしめやすいのが、大人の習い事の良いところです。
小さいゴールを重ねる楽しさ
1か月前は右手だけでぎこちなく弾いていたのが、今はゆっくりだけど両手で合わせられるようになった。その先には、最初の1曲を通して弾けるようになる楽しみがある――こうした小さな進歩の積み重ねは、ゴールに近づくほどわくわくします。そういう高揚感を味わうためにも、「あと○小節でサビが完成する」というように、進捗がはっきり目に見えるとさらにモチベーションが上がるはずです。
9. 目標を上手に活かすためのテクニック
曲の難易度は欲張りすぎない
目標を設定するとき、憧れの名曲や高度なクラシックに挑戦するのも悪くないですが、あまりにも難易度が高いと挫折しやすいリスクがあります。とくに最初のうちは、「簡単そうに聴こえるポップスのアレンジ版」や「初心者向けにアレンジされたクラシックの一部」などから始めるのがおすすめです。ちょっと練習すれば通せる手応えがあるからこそ、達成感を積み重ねやすくなります。
自分なりの評価軸を作る
大人はどうしても「完璧に弾けないと意味がない」「きれいな音が出せなければダメ」と厳しく考えすぎる傾向がありますが、趣味である以上、少しくらいミスタッチがあってもいいのです。たとえば「今日はテンポ通りに最後まで通したから合格」「ミスしても途中で止まらずに続けられたからOK」というように、自分で評価軸を設定すると、“そこまで完璧じゃなくても合格”と考えられるようになり、行動が続きやすくなります。
定期的に動画や音声を録る
上達しているかどうかを客観的に知る方法として、自分の演奏を録音・録画しておくのは非常に有効です。数週間から1か月後に聴き返すと、「ここは前よりスムーズに弾けてるな」と実感できることが多々あります。それもまた“見える化”の一つ。録音された自分の演奏を聴くのは最初は恥ずかしいかもしれませんが、慣れてくると「こんなに変わった!」という達成感を得やすく、やる気を後押ししてくれます。
10. 具体的な例:初心者が目標を見える化する流れ
ここで簡単な例を挙げてみましょう。
- 長期的な目標
- 「3か月後までに、アニメの主題歌を片手ずつ通して弾けるようになりたい」
- 中期的な目標
- 1か月目: イントロ部分だけでも右手で弾いてみる
- 2か月目: Aメロも右手で弾けるようにし、イントロと合わせて通す練習
- 3か月目: 左手の簡単なコードを足して、サビまで通す
- 短期的な目標
- 週に3日、少なくとも各10分は練習時間を確保する
- 1週間でイントロを繰り返し弾けるようにする(テンポはゆっくりでもOK)
- 1曲をいくつかのパートに分割し、それぞれが弾けるようになったらチェックを入れる
- 見える化の方法
- ノートに4つのパートを横に書き、できるようになった日付をメモする
- 練習した日はカレンダーにスタンプを押す
- 月末に1度録画して、自分の演奏を客観的にチェックする
こういった形で小さな目標を重ねていけば、3か月で一通り片手弾きができるようになる可能性は十分にあります。鍵は、“完璧に弾くよりもとにかく通せるようにしてみる”といった気持ちで、ハードルを低めに設定することです。
11. 継続するほど「目標の見える化」の効果は大きくなる
最初の達成が大きな弾みになる
最初は「イントロだけでも、弾けるようになると面白いかな?」くらいの軽い気持ちで始めてOK。イントロが弾けるようになったら、「じゃあ次はサビもやってみるか」と自然にやる気が湧いてきます。ここで記録をつけておけば、「1週間前はまったく指が動かなかったのに、今はミス少なく弾けるようになってる!」と自分の進歩を感じられて、やめにくくなるわけです。
次の曲への挑戦もスムーズに
1曲を通せるようになったら、次に気になる曲やもう少しレベルの高い曲へ挑戦するのが楽しみになるでしょう。そのときにまた、「今回の曲は4週間でここまで」「次は左手も少しメロディっぽく弾いてみよう」など、達成しやすい目標を作れば、上達のサイクルが回り始めます。
12. “達成可能な目標”だから、行動に移したくなる
「上達している実感」を手に入れる仕掛け
見える化の最大の利点は、自分がどこまで進んだかを客観的に知れること。大人はどうしても成果主義な考え方になりがちですし、時間やお金をかけるなら確実に上達したいと思うもの。その際、記録を残して「ここまでできるようになった」と可視化する作業は、「着実に上達しているな」と実感する助けになります。
自分を励ますご褒美設定もおすすめ
見える化した目標を達成したら、ちょっとしたご褒美を用意するのもいい方法です。「今日の練習をこなしたらおいしいスイーツを食べる」とか、「1曲仕上げたら欲しかった音楽関連グッズを買う」というように、自分なりのモチベーションを与えてあげると、忙しい中でも目標に向かって取り組みやすくなるでしょう。
13. 大人から始めるピアノだからこそ感じられる楽しさ
音楽の背景や曲の味わいを深く理解できる
子どもよりも豊富な人生経験を持つ大人だからこそ、「この曲はこういう背景があって作られたんだ」とか、「このフレーズは自分の人生のある場面と重なるな」と感じながら演奏できる楽しさがあります。そういった感性や思い入れを目標設定にも反映すれば、単なる“練習”だけでなく、“自分の物語”としてピアノに向き合えるようになるはずです。
ストレス発散や自己表現の場として
職場や家族のことなど、プレッシャーの多い毎日を過ごしている大人にとって、ピアノを弾く時間は貴重なリフレッシュでもあります。感情を音で表現する気持ちよさは格別です。「今日は嫌なことがあったけど、弾いているうちにすっきりした」という日があるかもしれません。こうした“音楽の力”を感じられることも、大人の趣味としての大きな魅力と言えるでしょう。
14. まとめ~見える化が後押しする、あなたの一歩~
大人になってからピアノを始めるとき、「どうやって続ければいいのか」という壁は誰しもが抱えやすいものかもしれません。そこに力を貸してくれるのが、「目標を明確にして可視化する」やり方です。
- 小さなゴールをいくつも作る
- 練習内容や練習時間を記録する
- 進捗を確認して、できたところにチェックや丸をつける
- 最終的には1曲を通して弾くなど、明確なゴールを描いてみる
こうしたステップを踏むと、「やってみようかな」という気持ちが自然と盛り上がり、忙しい日々の中でも「あ、今日はちょっとだけでも弾きたいな」と思えるようになるはずです。
一度目標が形になると、実行する意欲が増し、途中で諦めそうになっても、「ここまで来たんだからもう少し頑張ろう」と思えるようになります。ゴールまでの道のりが長く感じられるときも、小さく分割された目標をひとつひとつクリアする喜びが、「いつの間にかかなり進んだな」という感覚をもたらしてくれるでしょう。
何より大切なのは、完璧を求めすぎず、実践しやすい目標を設定すること。大人の生活には、想定外の出来事や突発的な予定が入りやすいので、柔軟に目標を見直してOK。大事なのは「やめる」よりも「続ける」ことであり、「途中でブランクがあっても戻ってこれる」状態を作ることです。
これからピアノを始める方、再チャレンジしたい方は、ぜひ“目標の明確化と見える化”を試してみてください。どんな曲に挑戦するのか、どこまで弾けるようになりたいのかを紙やデジタルのメモに書き出してみるだけで、気持ちがずいぶん違うはずです。達成できた自分を思い描きながら、一歩ずつ前に進んでみましょう。大人だからこそ味わえる深い充実感が、きっとその先で待っています。
Synthesiaを使ったピアノ練習について
SynthesiaFanでは下記のようなピアノ未経験者の練習・独学を支援する情報を載せています。
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参考リンク
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