ブルグミュラー

ブルグミュラー(Johann Friedrich Burgmüller, 1806–1874)は、ドイツ生まれの作曲家であり、ピアニスト、音楽教育者としても知られています。彼は主に初心者や中級者向けのピアノ練習曲を多く手がけ、その楽曲は今でも世界中で愛されています。この記事では、ブルグミュラーの生涯、代表的な作品、そして彼の楽曲がピアノ教育においてどのように役立っているのかについて詳しく解説します。

目次

ブルグミュラーの生涯

ブルグミュラーは1806年、ドイツのレーゲンスブルクに生まれました。音楽一家に育ち、父親のアウグスト・ブルグミュラーも作曲家で指揮者でした。幼少期から音楽の才能を発揮し、ピアノと作曲を学びました。1832年にはパリに移住し、生涯を通じてこの地を拠点に活動しました。

パリでブルグミュラーは、特にピアノ教育の分野で高い評価を得ました。彼の練習曲集は、演奏技術だけでなく、音楽的表現力も養うことを目的としており、子どもたちや初心者に親しみやすい内容となっています。また、彼は他の作曲家たちとも交流を深め、パリ音楽界での地位を確立しました。

バイエル教則本とソナチネの間にブルグミュラーを練習する意義

ピアノを学ぶ過程で、バイエル教則本を修了した後、いきなりソナチネに進むのは技術的にも音楽的にも難易度が高いと感じる学習者が多くいます。この間を埋めるために、ブルグミュラーの練習曲を練習することが非常に効果的です。

ブルグミュラーの曲は、バイエルで培った基礎技術を応用しつつ、より高度な演奏技術や音楽表現力を自然に身につけられる構成となっています。特にOp.100の練習曲は、短い中にも多彩な技術と豊かな表現が凝縮されており、ソナチネに進む準備として最適です。

代表的な作品

ブルグミュラーの作品の中で最も有名なのは、ピアノの練習曲集です。その中でも以下の3つが特に知られています。

1. 25の練習曲 Op.100

この曲集は、初心者向けの練習曲として広く使用されています。各曲が短く、明確なテーマを持ち、技術的な課題と音楽性を兼ね備えています。たとえば、「アラベスク」や「やさしい花」などは、美しい旋律と簡単な技術練習が組み合わさっています。これらの曲は、単に指の練習を超えて、音楽的な表現力を磨くことができます。

Op.100の詳細と25曲の曲名

Op.100の練習曲集は、ピアノ教育の中でも特に人気のある教材です。この曲集は、以下の25曲から構成されています。

  1. 素直な心 (La candeur)
  2. アラベスク (Arabesque)
  3. 牧歌 (La pastorale)
  4. 小さな集会 (Petite réunion)
  5. 無邪気 (Innocence)
  6. 進歩 (Progress)
  7. 清らかな流れ (La rivière)
  8. 優美 (La gracieuse)
  9. 狩り (La chasse)
  10. やさしい花 (Tendre fleur)
  11. せきれい (La petite plainte)
  12. 分かれ (La fée)
  13. なぐさめ (Consolation)
  14. スティリエンヌ (La Styrienne)
  15. バラード (Ballade)
  16. あまいなげき (La chanson de l’ogre)
  17. おしゃべり (Bavardage)
  18. 気がかり (Inquiétude)
  19. アヴェ・マリア (Ave Maria)
  20. タランテラ (Tarantelle)
  21. 天使のハーモニー (Voix de l’ange)
  22. 舟歌 (Barcarolle)
  23. 帰り道 (Conte d’hiver)
  24. つばめ(Gazouillement)
  25. 貴婦人の乗馬 (La chevaleresque)

これらの曲は、技術的な課題を一つずつ克服しながら、音楽的なセンスも同時に養うことができます。

2. 18の練習曲 Op.109

Op.109は、Op.100よりも少し難易度が高く、中級者向けの内容です。これらの曲は、より高度なテクニックを要する一方で、音楽的な深みも追求しています。「真珠」や「バラード」などの楽曲は、演奏者に多様な感情を表現する機会を与えます。

3. 12の練習曲 Op.105

Op.105は、さらに進んだ演奏者向けの曲集です。この曲集では、技巧的な挑戦だけでなく、より高度な音楽的洞察力が求められます。これらの曲は演奏会でも取り上げられることがあり、教育目的を超えた芸術的価値を持っています。

ブルグミュラーの楽曲の特徴

ブルグミュラーのピアノ練習曲には、いくつかの際立った特徴があります。

  1. メロディの美しさ ブルグミュラーの練習曲は、単なる指の運動ではなく、美しい旋律が特徴です。これにより、学習者が音楽そのものを楽しむことができ、演奏へのモチベーションが高まります。
  2. 物語性 各曲にはタイトルが付けられており、それぞれが特定のイメージや物語を想起させます。この物語性が、演奏者に表現力を養う機会を提供します。
  3. 技術と音楽性の融合 練習曲でありながら、純粋に音楽的な楽しさも感じられる構成になっています。これにより、技術の習得と音楽的感性の向上が同時に実現します。

ピアノ教育におけるブルグミュラーの役割

ブルグミュラーの練習曲は、ピアノ教育において以下のような点で重要な役割を果たしています。

初心者に最適な教材

ブルグミュラーのOp.100は、初心者が基礎的な技術を習得するための最適な教材です。短く簡潔な曲でありながら、音楽的な完成度が高く、初心者が楽しく学べる構成となっています。

技術の段階的な向上

Op.100からOp.109、Op.105へと進むことで、学習者は段階的に高度な技術を習得できます。このような体系的な教材は、長期的な学習計画を立てるうえで非常に有用です。

表現力の育成

タイトルや物語性のある曲を通じて、学習者は単に音を出すだけでなく、音楽的な感情を表現する力を養うことができます。これは、他の作曲家の練習曲では得られないブルグミュラーの大きな魅力の一つです。

Op.100の楽譜の入手

紙媒体

ブルグミュラーのOp.100の楽譜は「ブルグミュラー25曲の練習曲」として数多く出版されています。25曲しかないため解説無しのものは安価ですが、解説付きのものを購入するとより理解が深まって良いと思います。

PDF

ブルグミュラーは1874年没ですので、没後70年以上経過しており、著作権の問題が発生しません。
紙媒体で無くともよければ、IMSLPからの入手が可能です。

たとえばこちらから楽譜をダウンロードできます。

IMSLPから寄付を求められる画面に遷移すると思いますが、15秒待って出現する「ダウンロードを再開するにはこちらをクリックしてください。」の文字をクリックすると無料で楽譜PDFを入手できます。
もちろん、もし構わなければ登録や寄付を行っても良いと思います。

楽譜は記入して勉強するほうが便利なので、できれば書籍になっているものの購入をオススメします。

練習用MIDIファイルの入手

こちらのサイトで25曲のMIDIデータが揃っていましたのでご紹介します。ただ、左右の手に分かれたデータにはなっていないのでピアノ練習に適していないのが難点です。DAWでご自分で左右に分け直すなど手段はあります。

ローランドネットワークサービスから【アーティスト名】で「ブルグミュラー 」を検索するとピアノ練習用MIDIが1曲あたり110円で販売されているので、こちらを購入するのがオススメだと思います。

ヤマハミュージックショップでも取り扱いがありますが、1曲220円でした。月5曲ずつの定期購読であればローランドと同額で入手できますが、集めきるまでに時間がかかってしまいます。

現代におけるブルグミュラー

ブルグミュラーの練習曲は、19世紀に書かれたものでありながら、現代のピアノ教育においてもその価値は色あせていません。日本でも多くのピアノ教室で採用されており、初心者や子どもたちにとって親しみやすい教材として愛されています。

また、ブルグミュラーの曲は、単に練習のためだけでなく、演奏会やコンクールのレパートリーとしても取り上げられることがあります。これにより、演奏者は技術と表現力の両方をアピールする機会を得ることができます。

まとめ

ブルグミュラーは、その生涯を通じてピアノ教育に多大な貢献をした作曲家です。彼の練習曲は、美しい旋律と音楽的な表現力を兼ね備え、初心者から中級者まで幅広い層にとって理想的な教材となっています。また、彼の楽曲はピアノを学ぶ楽しさを実感させるものであり、世代を超えて愛され続けています。

これからピアノを始める方や、子どもにピアノを教える方にとって、ブルグミュラーの練習曲は欠かせない存在と言えるでしょう。ぜひ一度、その美しい旋律と豊かな音楽性を体感してみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次