優雅で壮大な「水上の音楽」をピアノで味わう
「水上の音楽(Water Music)」は、ドイツ出身でイギリス宮廷でも活躍した作曲家ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685–1759)による代表的な管弦楽組曲です。1717年、テムズ川で行われたイギリス国王ジョージ1世の舟遊びのために作曲されたこの曲は、屋外での演奏にも耐える華やかでリズミカルな楽章が特徴です。
その中から、初心者にも取り組みやすい一部の楽章がピアノ用にアレンジされており、バロック音楽特有のリズムと構造を楽しく学ぶことができます。
初心者でも楽しめる理由
構造がシンプルで繰り返しが多い
バロック音楽ではモチーフ(主題)の繰り返しが多く、それに変化を加えながら進行していきます。そのため譜読みがしやすく、「どこを練習すればいいか」が明確になります。
はっきりとしたリズムでテンポがとりやすい
行進曲やホーンパイプなど舞曲のリズムが基本となっており、拍子感がつかみやすく、初心者でもテンポを安定させて弾きやすい構成です。
鍵盤の範囲が狭く、指の動きが自然
アレンジされた譜面は、黒鍵を多く使わないハ長調またはト長調で書かれていることが多く、鍵盤上の移動も少ないため、手の小さい方や鍵盤に不慣れな方にも安心です。
ヘンデルと「水上の音楽」
イギリス国王も魅了した祝祭音楽
ヘンデルはバロック時代後期を代表する作曲家で、荘厳なオラトリオ「メサイア」でも知られます。「水上の音楽」は、国王ジョージ1世の舟遊びの場で演奏するために書かれた音楽で、宮廷の威厳と祝祭感を演出する目的がありました。
ピアノアレンジ版でもその華やかさと力強さは健在で、演奏することで“特別な瞬間”を体験するような感覚を味わうことができます。
この曲で養える演奏力
拍子感・テンポ感の基礎
ホーンパイプやブーレなど、舞曲に由来するリズムパターンが多く、1拍目の重みや2・3拍目の軽さを体感することで、自然なテンポ感覚を養うことができます。
フレーズの方向性と強弱のコントロール
旋律が短い単位で構成されており、強弱や抑揚をつけることで音楽に“流れ”が生まれます。バロック特有の“しゃべるような音楽”の練習にもなります。
両手の独立性
右手の旋律に対して左手の伴奏は、一定のリズムやバスの流れを保つ必要があります。両手が別々のリズムを扱うことで、左右の独立性が自然と高まります。
練習のポイント
短いフレーズをブロックごとに練習
いきなり全体を通すのではなく、4小節ごとのまとまりで練習することで、暗譜しやすく、音楽の構造も理解しやすくなります。
スタッカートやアクセントに注目
バロック音楽では、音の“切れ”や“跳ね”が重要です。スラーやスタッカートを読み飛ばさず、表現としてきちんと取り入れることで、演奏がぐっと引き締まります。
ペダルは基本使わないつもりで練習
バロック音楽は基本的にペダルを使わない様式です。手で音をつなぐ意識を持ち、指の運びと保持音を大切にしましょう。必要な場合は最低限、短く控えめに使用します。
楽譜・MIDIデータのご案内
「水上の音楽」のピアノアレンジは、子ども用や初心者向けのクラシック楽譜集に広く収録されています。ヤマハミュージックデータショップでは、初心者向けの簡易版MIDIデータも用意されており、テンポ変更や片手練習モードも利用できます。
ピアノ一台で、宮廷の祝祭を。
ヘンデルの「水上の音楽」は、あなたの指先から優雅な世界を広げてくれます。
古典の入り口として、ぜひこの壮麗な音楽に挑戦してみてください。