ワルツ（シューベルト）
曲の概要
「ワルツ（Waltz）」といえば、3拍子の軽やかで優雅な舞曲を思い浮かべる人も多いでしょう。フランツ・シューベルトが残した多くのワルツの中でも、特に初心者向けにアレンジされた「楽興の時」や「36のオリジナル舞曲」などの作品群には、短くて覚えやすいワルツがいくつも収められています。
ここでは、その中でも特に親しみやすく、ピアノを始めたばかりの方でも十分楽しみながら弾ける一曲を紹介します。シューベルト特有の柔らかさと繊細さを感じさせる旋律は、ピアノの鍵盤の上で歌う感覚を養ってくれるでしょう。
曲の背景と歴史
フランツ・シューベルト（1797–1828）は、オーストリア・ウィーン出身の作曲家で、歌曲（リート）の作曲家として特に有名ですが、ピアノ曲も数多く残しています。その中で、「ワルツ（Ländler）」や「エコセーズ」「ドイツ舞曲」など、舞曲形式の小品は彼の即興性と詩的感覚が発揮された作品群です。
当時の舞踏会文化の中では、社交ダンスとしてワルツが流行しており、シューベルトはこれらを自らの仲間内や一般市民向けに提供していました。彼の舞曲はサロンで演奏されるだけでなく、家庭でも気軽に弾かれ、音楽愛好家の間で広く親しまれていました。
ピアノ初心者にとっての魅力
シューベルトのワルツは、初心者にとって大きな利点を持っています。まず、フレーズが短く、手の移動が少ないため、片手ずつの練習がしやすい点。そして、3拍子のリズムに親しみながら、左手で伴奏のパターン（いわゆる“ワルツ・ベース”）を学ぶ良い機会になります。
右手のメロディーは比較的音域も狭く、装飾音などの複雑な技巧が控えめで、テンポも自在に調整できるため、自分のペースで丁寧に弾くことができます。また、短いながらも完成された音楽としての充実感があり、演奏後の満足感が得られやすいのもポイントです。
どんな練習をすれば良いか
最初に意識したいのは、3拍子の感じ方です。「1・2・3、1・2・3」と声に出しながら手を叩いたり、身体を揺らしたりして、リズムに体を慣れさせると、鍵盤の上でも自然にリズムが表現できるようになります。
右手のメロディーは、歌うように弾くことを意識しましょう。フレーズの終わりに向かって音量を少し抑えるなど、音楽的な抑揚をつけるとより美しく仕上がります。
左手は「低音＋和音」のワルツ伴奏型が基本です。例えば、「ド・ソミ（1・2・3）」のような形で練習し、リズムをしっかりキープすることが大切です。和音の響きを聴きながら、右手のメロディーとのバランスを取る練習も効果的です。
テンポはゆっくりからスタートし、ミスをしない速さで丁寧に反復することを心がけましょう。
楽譜の入手方法とMIDIデータ
シューベルトのワルツは、ヤマハミュージックデータショップなどで初心者向けアレンジ楽譜が販売されています。オリジナルに忠実な譜面もありますが、まずはやさしいバージョンから始めるのが無理なく続けるコツです。
また、MIDIデータを併用すれば、片手ずつの再生やテンポ調整などが可能となり、反復練習に非常に役立ちます。演奏例としてMIDIを聴くことで、フレーズの流れやタッチの感覚も視覚的・聴覚的に把握できます。
まとめ
「ワルツ（シューベルト）」は、ピアノ初心者が初めてクラシックの魅力に触れるのにぴったりな一曲です。優美でシンプルなメロディーと、整った構成が、音楽の基礎と楽しさを同時に教えてくれます。3拍子のリズムに乗って、歌うように鍵盤を奏でることの喜びを、ぜひ味わってみてください。