はじめに
大人になってからピアノに挑戦したいと考えている人の中には、「周りは子どもの頃からやっている人ばかり」「今さら始めても、他の人には到底追いつけない」と、つい他人との比較で気後れしてしまうことがあるのではないでしょうか。
でも実は、周りのことは一旦脇に置いて「過去の自分と比べる」だけの習慣を身につけると、思ったよりも気楽に上達を楽しめるようになる可能性があります。大人だからこそ、色々な肩書きや周囲の目を気にしがちですが、趣味で楽しむピアノなら“自分基準”で成長を測るほうが効果的。
この記事では、他人と比べず、過去の自分とだけ比較する習慣をどう作ればいいかについて考えてみます。そうすることで、日々の変化や小さな進歩をしっかり認識できるようになり、「私、意外とできてる!」とモチベーションを保ちやすくなるはずです。忙しい大人でも気軽に始められる方法や考え方を中心に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ大人は他人と比べてしまうのか
子どもの頃は当たり前の発表やコンクールが気になる
子ども時代のピアノ学習には、学校の発表会やコンクールなど、周囲と比較される機会が多いイメージがあるかもしれません。大人になってから習うとなると、そうしたイベントに参加する人は少ないかもしれませんが、「ピアノ学習=他人と比べられるもの」「人前で演奏して上手か下手か評価されるもの」という印象を引きずっているケースもあります。結果、大人になってからピアノを始めようと考える際にも、「上手くならないと恥ずかしい」「あの人にはかなわない」という思いにとらわれてしまいがち。これはある意味、大人が持っている“比較思考”が悪い方向に働いているとも言えます。
大人は仕事などで実績を求められがち
社会人として働いていると、成果や実績で評価される場面が日常にあります。上司や同僚との比較、同期や後輩との比較など、つい“他人と比べてどうか”を気にする習性が身につきやすいのです。その感覚のまま趣味のピアノに向き合うと、「こんなに練習しているのにあの人より下手だ」など、自分を責めやすくなってしまうかもしれません。趣味の世界でさえ他人と競う必要はないのに、職場のように“他人との比較”を持ち込んでしまうのです。
過去の自分と比べる習慣のメリット
着実な成長を実感しやすい
他人と比べると、「あの人は早くから習っているから上手いのは当然だ」「この人は才能がある」と思ってしまい、自分が積み上げているものに気づきにくくなります。逆に、過去の自分と比べる視点を持つと、「先週はこのフレーズ弾けなかったのが、今日はスムーズにいった!」という小さな成長をしっかり認識できるでしょう。
それは、大人のピアノ学習においてとても大切なやりがいになります。誰かに勝つ必要はなく、昨日より今日、先週より今週の自分が少しでも上達しているなら、それで十分嬉しいものです。こうした進歩の感覚こそが、趣味を続けるモチベーションになるのです。
心理的プレッシャーを減らす
「他人に追いつかなくては」と思うと、忙しい仕事や家事の合間に無理して長時間の練習を入れようとし、結果的に疲れて挫折する可能性が高まります。一方、「過去の自分よりちょっとでも上手くなる」を目指すなら、5分や10分の練習でも progress を感じられやすく、プレッシャーが少ないです。
大人がピアノを趣味にするなら、できるだけプレッシャーを軽くして楽しむほうが続きやすいはずです。仕事のように厳しく評価されるわけではないので、気楽に「昨日より少し弾けるようになった」という基準で自分を褒められる環境を作るのは、意識しておくと良いでしょう。
具体的な「過去の自分との比較」方法
録音や録画で演奏を残す
スマホで簡単に録音・録画できる時代ですから、練習の最中や週に一度などのタイミングで自分の演奏を記録しておくといいでしょう。恥ずかしいかもしれませんが、後から振り返ると自分の上達を客観的に確かめられます。例えば、最初はぎこちなく音を外していたフレーズが、数週間後の録音ではスムーズに流れているかもしれません。そうした変化は非常に励みになるので、「他人と比べてどうこう」ではなく「あのときの自分よりここが良くなった」と感じられるでしょう。
練習日記やメモで進歩を可視化する
録音が苦手な場合でも、日記やメモを活用して「今日は10分だけ練習」「右手の速いパッセージが少し弾けた」など、簡単な記録をつけておくと効果的です。後から見返すと「週に一度しか弾かなかったのが、今は週に三度くらいは触れてるな」「最初は何も弾けなかったのに、今はこれだけ指が動くようになってる」と、成長を実感しやすくなります。
大人が上達を感じにくい理由と対策
子どものころほどの急激な伸びはない
人は子どものころの急成長を基準に考えると、「大人になってからは全然伸びない」と感じてしまいがちです。成長がゆっくりに見えるだけで、実は一歩ずつ進歩しているケースは少なくありません。過去の自分との比較をする際には、急激な変化を期待するより、「いつの間にかできることが増えている」という感覚を大事にしましょう。
例えば、最初は指がバラバラに動かなかったけれど、ある日急に「あれ、以前より弾きやすくなってる」と気づく瞬間があるものです。これは決して分かりやすい曲線で現れないかもしれませんが、コツコツ続けていれば必ず変化は起きます。
他人の完成度が目につきやすい
YouTubeやSNSでは、上手に弾く人の動画が簡単に見られます。そうすると、「自分はあんなに滑らかに弾けない」と自信をなくしてしまうかもしれません。でもそれは当たり前で、彼らがどれだけ練習を積んできたかは見えない部分です。
他人の完成度だけを見て比較し、落ち込むのは極めて非効率です。自分が最初に録画した演奏や、2週間前の練習成果と比べて「少し良くなった」と感じられればそれでOK。自分の基準を自分に置くことで、他人の動画は「うわあ、あんなに弾ける人もいるんだ」と刺激にする程度に留めるのがいいでしょう。
小さなステップの目標を設定する
1曲を細分化して進捗を見える化
大きな曲を丸ごと弾けるようになるのは時間がかかるかもしれません。そこで曲を細分化して、「まずはイントロだけ」「今週は右手のAメロを覚える」といった小さなステップを設定するといいでしょう。
小分けした目標を達成するたびに、「2週間前はAメロも弾けなかったのに、今は何とか形になった」と自分の成長を実感でき、モチベーションが維持しやすくなります。一気に完璧にしようとせず、短いフレーズごとの進歩を見届けるほうが、過去の自分との比較がしやすくなるのです。
練習時間や頻度を短く細かく記録する
「毎日30分」とか「週に3回1時間ずつ」と大きな目標を立てるより、「今日は10分だけ」「今週は5分の練習を4回」と細かく積み重ねるほうが、結果的に達成しやすいです。達成しやすい目標をクリアするたびに過去の自分と比較して「前は1回も弾かなかった週があったけど、今は確実に練習してる」と自信を持てます。
練習の進捗だけでなく、心の変化も比較しよう
落ち込みやすかった自分と今の自分
「昔はちょっと弾けないだけでイライラしていたけど、今は失敗も笑って流せるようになった」という変化は、上達とは違う形の成長と言えます。そうした心の変化も「過去の自分と比べてよくなった部分」として認識できると、ピアノを趣味にする意義がさらに大きくなるでしょう。
大人は往々にして忙しく、イライラや疲れを抱えやすいです。ピアノの練習を通じて「まぁ、うまくいかなくてもいいや」と心に余裕を持てるようになったなら、それだけでストレス軽減の効果が出ているとも言えます。これはお金や仕事の成果では得にくいリターンであり、過去の自分よりはるかに幸福度が増している証かもしれません。
楽しめる曲や好みのジャンルが増えた
最初は好きな曲が1つか2つしか思い浮かばなかったとしても、練習を続けるうちに「この作曲家の曲もいい」「意外とポップス系も面白い」というふうに、興味の幅が広がることがあります。こうした音楽の趣味の変化も、過去の自分と比べれば大きな成長のひとつです。
たとえ演奏レベルは大きく変わっていなくても、「もっと色々な曲を弾いてみたい」「今度はジャズにチャレンジしてみよう」と音楽の世界が広がっているなら、立派なステップアップ。自分自身が楽しめるバリエーションが増えているという点で、過去の自分にはない豊かさを手に入れたことになるでしょう。
他人との比較を完全に絶つ必要はないが…
仲間や先生の演奏は参考程度に
もちろん、仲間や先生の演奏を聴くこと自体は学びになるし、刺激を受けてモチベーションが上がることもあります。ただ、その演奏を基準に「自分はまだまだ下手だ」と落ち込むのは避けたいところ。良い演奏に出会ったら「素敵だな」「こんなふうに弾けるようになったら楽しそう」というポジティブな気づきだけを受け取り、自分を否定する材料にはしないほうが賢明です。
比べる必要がないとはいえ、周りとの交流はピアノ学習を豊かにしてくれる要素のひとつ。あくまで他人を参考にしつつ、自分がどれだけ成長したかという視点を忘れずにいれば、他人との比較で落ち込むリスクを最小限にできます。
イベントや発表会でも「自分基準」を保つ
大人向けの発表会や弾き合い会に参加すると、いろいろなレベルの人と同じステージに立つ機会もあるでしょう。そこで他人と自分を比べてしまうのは自然なことですが、あくまで自分の上達度を確かめる場と捉えて「前回より弾けるようになってるか」など、過去との比較基準を持つのが大切です。
演奏が上手い人を観て「すごいな」と憧れるのもいいのですが、それを「自分には無理」と嘆くより、「いつかこの曲を弾いてみたい」「ああいう表現を真似てみたい」と前向きに捉えるほうが健全です。過去に発表会へ出た自分と今回の自分を比べてどう成長したかを見るだけでも十分楽しいでしょう。
日々の実践例:過去の自分と比べる習慣
習慣1:週に一度だけ録音・録画する
毎日録音はしんどいかもしれませんが、週に一度くらいなら可能という人も多いでしょう。例えば日曜日に「今週のベスト演奏」を記録する形でOK。翌週になったらまた日曜に録音し、先週との違いを聴き比べてみるのです。そこに少しでも安定感や音の繋がりのスムーズさを感じられたら、「お、先週よりいいかも」と成長実感を得られます。
習慣2:練習ノートに「できるようになったこと」を書く
練習前後に「今日は右手のリズムを合わせることができた」「前回弾けなかったサビを通せるようになった」など、できるようになったポイントを一言メモ。月末にそれをまとめて読むと、意外と毎回進歩があることに気づき、「自分、ちゃんと成長してるじゃないか」と思えるはずです。
ポイントは「できなかったこと」より「できるようになったこと」にフォーカスすること。もちろん苦手意識を把握するのも大切ですが、過去との比較では「どこが良くなった」かを見つけるほうがモチベーションアップに直結します。
自分基準の学習で長続きし、結果的に上達も早い
ストレスが少ないから挫折しにくい
趣味でピアノを学ぶ大人にとって、ストレスや負担が増えるほど挫折のリスクも高まります。他人と比べて落ち込んだり、完璧を求めて時間が確保できずに自己嫌悪になったりすると、「やっぱり私には向いてなかった」と投げ出してしまいやすいです。
一方、過去の自分と比べる姿勢は「少しでも前に進めばOK」というゴール設定になるので、ストレスが少なく、自分の歩幅で進めます。そうなると自然に長続きし、結果的にはちゃんと上達しているという好循環に入りやすいのです。上達が早い人が羨ましいと感じるときもあるかもしれませんが、長く続けていれば自分なりのペースで確実に実力は積み上がっていきます。
楽しむ余裕が生まれ、音楽に深く触れられる
急いで成果を出そうとすると、曲をやっつけ的に覚えたり、苦痛を感じながら練習したりする人もいます。しかし、せっかくの趣味でそれをしてしまうと、音楽そのものを楽しむ余裕がありません。
過去の自分との比較をメインに据えれば、日々の練習が「どれだけ伸びたか」を味わう場になるので、苦しい作業よりも発見や喜びのほうに目が向きやすくなります。すると、「音楽を楽しむ」心のスペースが増えて、弾いている時間そのものが豊かな体験に変わるでしょう。
まとめ:今の自分より少し進むだけで、ピアノがぐんと楽しくなる
大人がピアノを学ぶとき、周囲の上手な人や子どもの頃から弾いてきた人と比べてしまうと、「自分には無理なのかな」と落ち込みやすいです。けれど、趣味としてのピアノなら、他人との比較はほとんど必要ないと言えます。むしろ、どんな趣味も「過去の自分より一歩前進したか」が大切なモチベーション源になるのではないでしょうか。
たとえ1週間前にできなかったフレーズが少し形になっただけでも、それは立派な成長。録音やメモで小さな進歩を記録しておけば、「ああ、あのときより指が動くようになった」と感じてニヤリとできるでしょう。それこそが大人が味わうべきピアノの醍醐味であり、ストレスの多い日常生活で失われがちな“自分を褒める”機会にもなります。
過去の自分と比べる習慣を取り入れると、ピアノ学習の続け方が格段に気楽になるのが特徴です。誰かと競う必要もないし、厳しいジャッジに怯えることもありません。下手でも一向に構わないし、自分のペースで成長していればそれでOK。これを肝に銘じておけば、忙しい合間でも「5分だけ弾こう」「今日はちょっとフレーズを通してみよう」と気軽に鍵盤に手が伸びるようになるはずです。
結果的に、長く続けられる学習スタイルが身につくと、いつの間にか「結構弾けるようになってるかも」という状態に到達することすら珍しくありません。大切なのはスタート時点でのレベルではなく、継続して小さな進歩を重ねること。そして、その進歩をしっかりと認識するために、過去の自分との比較が欠かせないのです。
どうか、「周りと比べて劣っているかも」という不安を手放して、昨日の自分や先週の自分を超えるだけを目標にピアノを楽しんでみてください。きっとそのほうが気持ちがずっと楽になり、少しずつ上達している実感をたっぷり味わえるはずです。大人だからこそできる、ストレスフリーで心が弾むピアノ学習を、ぜひ始めてみましょう。
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参考リンク



