音の世界で新しい一歩を~完璧主義を捨ててピアノを楽しむ大人の学び方~

目次

はじめに


大人になってから「ピアノを弾いてみたい」と思っても、子ども時代のように柔軟に学べるかどうか不安を感じる方は少なくないでしょう。忙しくて練習時間を確保しにくい、自分が思うように指を動かせるのか疑問、完璧に弾けないと恥ずかしい気がしてきてしまう――こうした理由でなかなか一歩を踏み出せないものです。

でも実際は、大人ならではの楽しみ方がピアノにはあります。子どもと違い、完璧を求めず、あくまで自分がリラックスして音を味わうためにピアノに向かうという学習スタイルを持てば、忙しくてもゆるやかに上達できますし、音を出す楽しさを存分に味わえます。

この記事では、「完璧主義を捨ててピアノを楽しむ」視点から、大人が無理なくピアノを続けるための考え方や実践的なヒントを紹介します。少しずつやれば確実に音を作れるようになり、忙しい中でも気軽に鍵盤に触れられる暮らしへと変わるかもしれません。練習量が足りない、自信がないと感じる大人ほど、この“ゆるいけれど着実”なアプローチが効果的です。

完璧を求めると大人は挫折しやすい

責任や期待が大きい大人の心理

大人になると、仕事や家庭などさまざまな責任を背負うことになり、「やるならしっかりやらなきゃ」という思考になりやすいです。ピアノのような習い事に関しても、「お金をかける以上は完璧に弾けるようにならないと」「中途半端にはできない」と自分にプレッシャーをかけてしまうことが多いでしょう。

しかし趣味である以上、そこまでストイックになる必要はありません。あまりにも高い完璧さを求めると、忙しくて時間が取れない日があったり、少し弾いても上達を実感できなかったりする度に「ダメだ、続かない」と自己否定につながってしまうのです。

子どもと違ってリカバリーが難しい?

大人はミスをすることに慣れていないわけではないものの、失敗に対する柔軟性が子どもより低い場面もあります。子どもだと「転んでも立ち上がればいいや」という気持ちになりやすいのに対し、大人は「ここで失敗するなんて自分に合わない」「今から始めてももう遅いんじゃないか」と考えてしまいがち。

結果、少しでも目標に届かないと即挫折に繋がりやすい。これが「完璧を目指す大人」が抱える落とし穴なのです。少しの失敗や停滞を許容して前に進む子どもとは違い、完璧を求めてしまうからこそ大人は辞める判断が早くなるケースが多いのです。

ゆるい目標設定で大人は続きやすい

あえて「最低限のライン」を低くする

練習量に関して「毎日30分ずつ欠かさずに」と設定すると、現実的に達成が難しい日が多く、挫折しがちです。代わりに「週に1回、10分でもいい」というように、かなり低めの目標を最初は設定してみましょう。

肩透かしを感じるかもしれませんが、5分や10分だけ弾いても、ゼロと比べれば大きな違いです。1週間まったく触れないより、「週末に5分だけ鍵盤に触れた」という実績のほうが遥かに続けやすい。こうした低めの基準からスタートすれば、プレッシャーが減って自然と鍵盤に向かう日が増える可能性があります。

曲の完成度は6割、7割で「良し」とする

クラシックの世界で完璧に弾くことをイメージする人も多いかもしれませんが、趣味として楽しむなら、6割、7割程度弾ければ十分味わえる曲も多いです。多少ミスしても音を楽しめればOKと割り切ることで、演奏へのハードルがぐっと下がり、精神的に楽になります。

特に大人は下手でも自分が楽しいならそれで良いのです。極端に言えば、全部弾き切れなくても、一部のフレーズが美しい音を奏でられたら、それで満足という考え方もアリでしょう。完璧な再現を目指すのではなく、音楽を楽しむことが目的だと自覚すれば、気負いが消えて練習が楽しくなるはずです。

上達を助ける「完璧じゃない学習」の利点

ミスを重ねても辞めにくい

完璧を求めていると、ミスをすると「やっぱり自分には向いてない」と一気に挫折に繋がる恐れがあります。一方、失敗を前提に「ちょっとずつ上手くなればいい」「ミスも味のうち」と考えていれば、弾いている最中のミスも「まあいいか」で済ませられる。

練習での失敗を過度に責めず、やり直す機会として捉えれば、ストレスが溜まらないので続けやすいです。お手本のような演奏から遠くても、自分なりのペースで進むなら楽しく学べるでしょう。

新しい曲やジャンルに挑戦しやすい

完璧を求めすぎると、一曲をマスターしなければ次へ行けないという意識に囚われる人もいます。しかし「6割~7割弾ければ合格」というゆるさがあれば、多少未完成でも気分転換に別の曲やジャンルに挑戦しやすく、結果的に音楽の幅が広がります。

いろいろな曲に手を出すうちに、思わぬお気に入りを見つけたり、以前の曲に戻ったときに「あれ、弾きやすくなった」と感じることもあるでしょう。完璧さを求めず自由に動き回るほうが、大人にとっては長続きする鍵になるかもしれません。

「過去の自分」を基準に進捗を測る

他人との比較ではなく、昨日の自分と比べる

ピアノはどうしても上手な人を見てしまうと、「私には無理だ」と思いがちです。大人になると周囲には子どもの頃から習っていた人もいるでしょう。でも、それよりも大事なのは「昨日の自分より上手くなったか」「先週より多少指が動くようになったか」で、自分自身の成長を確認することです。

他人と比べると完璧さを追い求めて挫折しやすいですが、過去の自分を基準にすれば、小さな進歩をきちんと評価できます。ミスが減ったとか、前は弾けなかった部分が弾けるようになったとか、そうした変化に目を向けると完璧を求めずとも自分なりの成長を感じられ、やる気が続きやすくなります。

録音や記録で自分の進歩を可視化

小さな進歩に気づくためには録音やメモが有効です。週に1度でもスマホで録音しておけば、数週間後に聴き返したとき「前より断然まともに弾けてるじゃん」と気づくかもしれません。

これは非常に大きなモチベーションになります。人は日々の練習だと進歩を感じにくいですが、録音を比べると違いが歴然ということが少なくありません。そこに「完璧ではないけれど、確かに上達している」自分が見つかれば、練習がさらに楽しくなるでしょう。

忙しい大人が継続するためのアイデア

週◯回、1回◯分だけと決める

仕事や家事で毎日練習は難しいと思うなら、週2~3回、1回あたり10分だけと決める方法があります。これは完璧主義を捨て、スモールステップでやる意思表示の一環。

練習回数や時間を限りなく少なく設定することで、義務感が薄れ、逆に「少しだけならやれそう」と気楽になります。意外と実際に弾き始めると10分で終わらずもっと弾いてしまうなんてこともあるため、「最低ラインを低く設定」は効果的です。

目標曲をフレーズごとに分割する

曲を丸ごと完璧にマスターしようとすると大変ですが、イントロだけ、サビだけというふうに分割すればゴールが近いのでモチベーションが持ちやすいです。完璧さを捨てるためにも、メインのフレーズを弾けるようになれば満足、と考えて挑戦するといいでしょう。

この部分弾けるようになれば6割完成、あとは気が向いたら練習すればいい――そんなゆるさがあると、気軽に手を出せます。曲の一部分だけでも弾ける喜びは大きいので、最初から全部弾く必要はありません。

メンタル面を支える工夫

「下手でいい」ことを自分に許可する

大人は下手なまま人前に出ることを恥ずかしがる傾向が強いですが、趣味なら何の問題もありません。自宅で弾くぶんには誰にも迷惑かからないわけですから、「下手でも自分が楽しければいい」と開き直るのが大切。

思い通りの演奏ができなくても、鍵盤を叩けば音は出ます。その音を聴き、自分でリズムを作っていく過程にこそ、ピアノの醍醐味があるはず。上手下手の基準を自分の楽しさより優先させないようにすれば、練習を続けるハードルが大きく下がります。

仲間や家族に進捗を報告してみる

自宅で一人練習しているだけだと、「こんな程度じゃダメなのでは」と孤独に落ち込みがちです。でも、家族や友人に「今週はサビが弾けるようになったかも」と伝えるだけで「すごいじゃん、聴いてみたい」と言われたりして、「そこまで完璧でなくても大丈夫なんだ」と感じられます。

同じく大人でピアノを始めた仲間と情報交換するのも効果的。上手な人がいても、その人をライバル視するのではなく「私もゆっくりやるね」というスタンスでいれば、情報交換や励まし合いが得られ、自分の不完全さを引け目に感じることが少なくなります。

ゆるい学習姿勢が結果的に上達を呼ぶ理由

ストレスフリーだと長く続けられる

習い事を上達させる最大のポイントは「続けること」。どれだけ意欲的に始めても、1か月で挫折してしまったら得られるものは少ないです。一方、ゆるい目標であっても1年、2年と続けば、確実に積み上げが生まれます。

大人は仕事や生活環境が変わることもあるため、多少ペースが乱れても大きなストレスを感じずに復帰できる柔軟さが必要。その柔軟性を持つためにも、完璧主義より「ちょっとずつでも毎週触れていればOK」という考え方が適しています。

自然に「もっと弾きたい」気持ちがわく

「無理せず週2回だけ弾けばいいや」と思って始めた人が、気づけば毎日少しずつ弾いていた、という話はよくあります。完璧を求めずにスタートすると、“弾かなきゃ”より“弾きたい”が強くなる瞬間がやってきて、そこから上達スピードが上がることがあるのです。

逆に最初からストイックに完璧を求めると、モチベーションが尽きる前に成果が出ず、「思ったより大変、向いてないかも」となりやすい。大人が趣味として楽しむには、やはりマイペースでのんびりスタートするほうが効果的でしょう。

実際に始めるならこの一歩を

一曲を選んで、そこだけでも始める

いろいろな曲をマスターしたいという欲張りな願望があるかもしれませんが、最初は1曲に絞るほうがおすすめです。あまりに多くの曲に手を出すと混乱しやすいし、どれも中途半端になってしまう恐れがあるでしょう。

最も好きな曲、あるいは一番簡単そうな曲――なんでも構いませんが、その1曲を完璧にではなく「サビだけ」「Aメロだけ」など短く区切って学習してみてください。目標を小さくすればサクッと達成でき、「やっぱりピアノって面白い」という感覚を得やすくなります。

教室やオンラインレッスンを体験する

独学で完璧を求めるより、専門家のアドバイスを少し受けるだけで学習がぐんと楽になる場合があります。実際の教室やオンラインレッスンで、最初の段階をサポートしてもらえば、指のフォームや簡単な譜読みを効率よく学べるでしょう。

何より「先生がいるから、自己流で変に苦しまずに済む」という安心感が大人には大きいです。教室に行かなくても月1回のレッスンを受けるだけで、完璧主義の呪縛から解放され、適度に弾けるようになっていく実感を得やすいでしょう。

まとめ:完璧でないからこそ、ピアノのある暮らしを楽しめる

大人がピアノを始めるとき、「子どもより上達が遅いんじゃないか」「練習できる時間が足りない」「完璧に弾けないと恥ずかしい」という不安に捕らわれやすいのは自然なことです。けれど、趣味なんですからそこまで厳密になる必要はありません。完璧主義を捨て、気楽に音を楽しむアプローチを選べば、忙しい合間でも学習を続けられる余地は充分にあります。

「1日5分」「週2回だけ」「6割弾ければOK」といったゆるい目標設定は、一見“ちゃんとした練習にならない”と思うかもしれません。でも、これが意外と最初のハードルを大きく下げるので、やってみると「それでも前より指が動くようになった」と体感しやすいのです。大人の暮らしは日々変化が多いからこそ、こうした柔軟な姿勢で取り組めるかどうかがカギとなります。

さらに、一度弾き始めるとたとえ5分でも「音を出す喜び」「指が動く感覚」の面白さを味わえるでしょう。そうすると自然と「もっと弾きたいな」と思い、練習時間を増やす人もいます。最初から完璧を狙うより、一歩ずつ無理なく進むことで、結果的には長い目で見て上達が速まるケースも珍しくありません。

もちろん、子どものように毎日何時間も練習する余裕はないかもしれません。それでも「多少弾ける」というだけで音楽がぐっと身近になり、好きな曲を自分の指で鳴らす喜びを味わえるのは大きな幸せです。人と比べる必要はまったくなく、自分自身の成長や気分転換を目指すだけで、趣味としての満足度は十分に得られるでしょう。

もし今、ピアノに興味があるものの「時間がなくて」「上手に弾けないかも」と足踏みしているなら、ぜひ完璧を求めない“ゆるめの練習”から始めてみてください。数分だけでも鍵盤に触れるのと触れないのでは天と地の差があります。弾いてみると「あれ、意外と音が出る」「ちょっと気分が良くなった」と思える瞬間が得られるはずです。

完璧じゃなくていい、自分のペースでいい。そんな気楽なスタンスで音と戯れてみると、いつの間にかピアノが“特別な存在”になっている可能性は大いにあります。音を出して遊ぶ心地よさを味わいつつ、少しずつ上達もしていく――それこそが大人ならではのピアノの楽しみではないでしょうか。

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