はじめに
大人になってから「ピアノを弾いてみたい」「あの曲を奏でられるようになったら素敵だな」と思いつつ、なかなか実際に行動に移せず過ごしている人は多いかもしれません。仕事や家事で忙しく、まとまった時間を取れないし、大きな楽器を買うのも勇気が要る――そんな理由で一歩を踏み出せないのは、よくある話です。
しかし実際には、ほんの小さなきっかけから気持ちを切り替え、少しずつピアノに触れていけば、大きなハードルだと思っていたものが案外気軽に越えられたりするものです。「忙しいから無理」「どうせ続かないかも」と思い込んでいるうちは行動できませんが、ちょっとした気分転換や導入だけで思いがけず弾けるようになる可能性もあるのです。
ここでは、そんな「小さなきっかけづくり」に注目して、大人がピアノで気分をリフレッシュしながら“音の世界”を楽しむための考え方を提案します。大げさな決意をしなくても、短時間の練習やゆるい目標設定で、意外と進んでいけるはずです。周りの目や自分への厳しさに縛られることなく、音を作り出す喜びを味わってみませんか。
なぜ大人は小さなきっかけを見逃しがちなのか
完璧や結果を求めすぎてスタートできない
大人になると、何かを始める際に「やるからには完璧を目指したい」「成果がすぐ出ないと意味がない」と考えがちです。子どもの頃なら純粋に興味を持って弾けたのに、今は大人としての責任や周りからのイメージを気にして、必死に頑張らないといけないという感覚が先行するのでしょう。
しかし実際には、趣味の世界で完璧や結果を求めすぎるとストレスが溜まりやすいです。最初は興味を持った“きっかけ”だけで充分なのに、大人は最終的な姿や上達度などを先に考えすぎてしまい、気軽に始めるチャンスを逃してしまうかもしれません。
忙しくてまとまった時間を確保できる気がしない
「ピアノは毎日練習しないと上達しない」「1日30分は弾かないと意味がない」という先入観もあり、大人になるとそんな時間を捻出できる気がしない人は多いでしょう。仕事や家事、育児で手いっぱいで、自分のために30分や1時間確保できる日は限られるかもしれません。
だからと言って一度に大きな時間を取ろうとすると、「やっぱり無理」となりがち。小さなきっかけ、つまり数分でも鍵盤に触れてみる、好きな曲のメロディだけを鳴らしてみるといった行動を見逃していると、一向に始められずに月日が経ってしまうのです。
「小さなきっかけ」の威力
音を出すだけでモチベーションが変わる
ピアノの良いところは、鍵盤を押せばすぐに音が鳴る点です。ギターやバイオリンのように音を出すまでの基礎が難しい楽器と比べても、単に鍵盤を押すだけなら誰でも音を出せます。これが小さなきっかけを作りやすい理由の一つ。
実際に音を鳴らすと、「あ、音が出た」という瞬間のちょっとした嬉しさが芽生えます。それは“行動”によって得られる刺激であり、「やっぱりピアノっていいな」「もう少し弾いてみようか」と思える大きな原動力になる。これは「練習しなきゃ」と構えるよりも、ずっと気軽で効果的なスタートです。
習慣化の第一歩は少量の行動
人が何かを習慣にしようとするとき、最初の行動を最小限に設定するのが定石です。いきなり「1日30分」と掲げると高いハードルになりがちですが、「1日に5分だけ弾こう」なら簡単にクリアしやすい。
最初の小さな達成で「こんなに楽しいなら、もう少し弾いてみよう」となると、自然と練習時間が増えたり、次の曲に挑戦してみたりという発展が期待できます。大人は忙しいので、最初の行動が負担だと続かないけれど、負担が軽ければ積み重ねやすいのです。
具体的な「小さなきっかけ」例
楽器店に行ってキーボードを触る
「本気で習う気はないけど、ちょっと興味ある」という段階でも、楽器店のショールームで電子ピアノやキーボードを触ってみるだけで、新鮮な気分になるかもしれません。試奏スペースで一音鳴らすと、「音が綺麗だな」「こんな機能があるんだ」と知るだけでも楽しいです。
そこから「こんな価格帯なら買えるかも」「ちょっと一台試してみたい」という気持ちになる可能性は十分。逆に家で弾くイメージが湧かないままだと、いつまでたっても始められないので、軽い気持ちで楽器店を覗いてみるのはかなり効果的です。
鍵盤アプリで遊んでみる
スマホやタブレットには、鍵盤アプリがたくさんあります。指でタッチするだけでピアノのような音が鳴るので、暇なときにちょっと遊んでみると「これ、意外と楽しいかも」と感じるでしょう。
もちろんアプリで本格的に練習するのは限界があるかもしれませんが、最初のきっかけとしては十分。「このアプリで遊ぶの面白いから、実際の鍵盤でも弾いてみたい」と思うかもしれません。まさに小さな一歩で、ピアノ学習に対する敷居をぐっと下げる手段です。
費用面でも「少しだけ」から始められる
中古や手頃なキーボードを検討する
ピアノ=高価というイメージを持つ人は多いですが、実は中古の電子ピアノや手軽なキーボードならリーズナブルなものが見つかる場合があります。数万円から数千円まで幅広く、最初から高額な機種を買わなくても趣味として始めるには十分な性能のものがあるでしょう。
これも「小さなきっかけづくり」。大きな投資を躊躇しているなら、まずは安いキーボードを買ってみて、「やっぱり続けたい」と思ったときにステップアップすればいいのです。敷居を低くすることで「やらない理由」を一つ減らせます。
レンタルや教室備え付けを利用する
「家にピアノを置くスペースがない」「初期費用が心配」という人は、楽器をレンタルしたり教室で備え付けのピアノを使ったりする手があります。最近は月々数千円で電子ピアノをレンタルできるサービスもあるので、買う前の様子見として活用するのも便利です。
教室に週1回だけ通い、家ではスマホアプリで遊ぶ、といった組み合わせでも小さな導入としては十分。何より「まず少しだけ始めてみる」という姿勢が大切なので、買う・買わないの二極で悩む前に一歩踏み出せば、気軽に体験できるでしょう。
時間面の不安を解消するコツ
「練習」より「気分転換」の感覚
大人がピアノに触れる際、「練習しなきゃ」という意識が強いと義務感が生まれ、時間を見つけにくいかもしれません。仕事から疲れて帰ってきて「練習しなくちゃ」と思うと、さらにストレスを感じてしまうことも。
でも「気分転換にちょっと触ってみる」「好きな曲を部分的に鳴らしてみる」というスタンスなら、仕事や家事の合間にも「ちょっとリラックスしたいから鍵盤に触れよう」という行動が取りやすくなるでしょう。5分や10分弾くだけで頭がすっきりする感覚を覚えれば、そのうち自然と継続しやすくなります。
週2回、月5回など回数制限でプレッシャーを下げる
「毎日弾く」と決めると負担に感じる人は多いです。そこで週2回、月5回など回数ベースで目標を作り、1回あたりの練習時間は気分次第にしておくという方法があります。
例えば「月内に合計5回ピアノを触る」なら、忙しい週は0回でも、余裕がある週に2~3回取り戻すことでクリアできる。これなら仕事や家庭のスケジュールに柔軟に対応しつつ、一定の頻度でピアノに向かえるので、「結局触らないまま終わった」となるリスクが減ります。
人目を気にせず上手くなる実践法
録画や録音は自分の成長記録としてだけ使う
周囲の評価が怖いなら、最初は自分の演奏を他人に聴かせる必要はありません。ただ、自分の成長を確かめるために録画や録音を活用するのは大いにおすすめです。
誰にも見せなくていいので気楽に撮っておき、数週間後に見返すと「あ、こんなフレーズ前は弾けなかったのに今はそこそこ弾けてる」と気づける場合があります。すると、「人には見せられないけど自分なりに成長してる!」という自信が養われ、周囲の反応を気にする気持ちが小さくなるでしょう。
発表会やイベントは興味が出るまで行かなくてOK
教室に通うと「発表会に出てみませんか?」と誘われることがありますが、もし自分がまったく人前で演奏する気がないなら無理に出る必要はありません。大人の趣味ですから、楽しむためにやっているわけで、イベントへの参加は意欲が出てからで十分。
中には人前で弾くのが好きでそこにモチベーションを見出す人もいますが、そうでないなら「自分は別に出なくてもいいか」と割り切ると気が楽です。周囲の目がなければ存分に音を楽しめるタイプの人には、そもそもイベントは不要です。
小さな成功を積み重ねるステップ
最低限のルール:1日1フレーズだけ弾いてみる
具体的に何をすればいいかわからないなら、まず「好きな曲のごく短いフレーズだけ毎日(または週◯回)弾く」というルールを作ってみてください。ほんの5~10秒のメロディだけでOKというレベルの低さで構いません。
たとえ馬鹿らしいと思えても、その小さな成功体験を積み重ねるうちに「もう少し長く弾いてみようかな」という気持ちが自然と湧いてきます。これが小さなきっかけづくりの最たる例であり、周囲の反応を気にする余地なくサクッと実行できるでしょう。
次のステップ:1曲を数回でも通せたら達成とする
ある程度慣れてきたら、1曲を通して弾いてみる際、「何度か通して弾けたら目標達成」と設定してみるのもいい方法です。ミスがあっても止まらず通せたら◯回でOK、と自分ルールを決めれば、「完璧に弾ききらないとダメ」とはならないので気持ちが楽。
数回通すうちに、「ここが苦手だな」「このテンポだと安定するな」といった発見があり、自然と改善したくなります。いつの間にか周囲の評価より、音楽の出来を自分基準で楽しむ状態が作られているかもしれません。
やっぱり弾きたいと思ったときの行動術
勢いが大事:楽器やレッスンをすぐ決める
「やっぱりピアノを弾きたいかも」と思えたら、あまり時間を置かずに行動に移してしまうのが得策です。なぜなら、大人は忙しくて気分やモチベーションが移ろいやすく、時間を置くほど「やっぱり面倒」となりやすいから。
具体的には、「近所の音楽教室の体験レッスンを予約する」「ネットで手頃なキーボードを注文する」など即日できるアクションを取ってみてください。予約や注文をしてしまえば、後から「やっぱりやめる」を考えるハードルが高くなるので、一歩踏み出しやすくなります。
周囲にあえて「始めたよ」と伝える場合
周囲の目が嫌な人は黙って始めてもいいですが、人によっては「あえて言う」ことで逃げられなくするのが効果的なタイプもいます。「私、最近ピアノやってるんだ」と宣言すると、後戻りしにくくなるので、半ば強制的に続ける理由づけができます。
ここで大事なのは「上手くなる」と豪語しなくてもいいということ。「気分転換にゆるく始めたの」と言えば、周囲もさほど厳しく要求してこないし、自分も過大な期待を負わなくて済むはずです。
続けるうちに周囲の反応も変わる
意外と応援してくれる人が多い
「大人が今からピアノ?」と馬鹿にされると思いきや、実際には「素敵だね」「応援するよ」と言ってくれる人も多いものです。特に家族や仲の良い友人は、その姿勢を肯定的に捉えてくれるでしょう。
誰もが音楽を楽しむ姿に対して何かしらの敬意を抱くもの。あなたが真剣に取り組んでいれば、周囲の評価はむしろプラスになりやすい。「下手だけど楽しそう」と見られると、そこにはプラスの空気が生まれ、自分もさらに気分良く続けられます。
そのうち、披露する機会がほしくなるかも
最初は人前で弾くなんて絶対無理と思っていたとしても、続けているうちに「少しは弾けるようになったから聴いてもらおうか」と思う瞬間が訪れることがあります。それは周囲の反応を気にして委縮するのではなく、自分が自主的に「今なら見せてもいいかも」と前向きに感じられる状態です。
そんな心境に達したら、職場の仲間や家族の前で簡単に披露してみるのもいいし、カジュアルな発表会に出てみるのもいいでしょう。最初の時点で人前演奏を視野に入れなくても、学習を続けることで新しい扉が開くものです。
まとめ:小さなきっかけで音楽を味わい、周囲の目を気にしない自分になろう
大人になってピアノを始めたい気持ちがあっても、「周囲の反応が怖い」「練習時間がない」「続けられるか分からない」と思うと、なかなか行動に移せないものです。ところが実際には、たったひとつの小さなきっかけで扉を開けると、意外なほどスムーズに音楽の世界へ飛び込める可能性があります。
例えば楽器店でキーボードを触ってみるだけ、スマホの鍵盤アプリをダウンロードして遊んでみるだけ、といった行動でも「やっぱり音を作るのって楽しいな」という気持ちを思い出すかもしれません。そうすると自然と「少しだけ弾こうかな」という気持ちが生まれ、いつの間にか練習回数も増えたりするものです。
また、あえて周りの声に耳を塞ぐ意味で「ゆるい目標」「ミニ練習」を心がけるのも効果的。1日30分が無理なら週2回10分だけとか、曲はサビだけ弾ければ満足といった設定にすれば、周囲の人が「まだそこしか弾けないの?」と言ったとしても気にならなくなるでしょう。むしろ「これで充分楽しめてるんだ」と納得できるし、「もっと弾きたい」と思ったら自然に練習を増やせます。
実際、趣味とは本来自分が楽しむためのもの。大人がピアノを始めて下手だったとしても、そこには確実に音を出す喜びや気分転換の効果、さらには人間関係の広がりなどが待っています。周囲の期待や評価に振り回されるより、「自分が音を味わい、心地よさを得られる時間を持てる」というプラス面に目を向ければ、やってみる価値はいくらでも感じられるはずです。
今日からできる行動はいくらでもあります。まずはアプリをインストールしてみる、楽器店に立ち寄る、週1回だけピアノに触れると決める――といった小さなステップが、やがて「自分はピアノをやっているんだ」という満足感に繋がるでしょう。周囲の目を気にしすぎるより、自分が作る音に集中し、その音と向き合う時間を楽しんでください。ちょっとした一歩が、人生に彩りを添える大きな変化になるかもしれません。
Synthesiaを使ったピアノ練習について
SynthesiaFanでは下記のようなピアノ未経験者の練習・独学を支援する情報を載せています。
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もしご興味があればぜひこちらの情報もご覧ください。
参考リンク
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