大人のピアノ初心者が挫折しないための秘訣 ~続ける仕組みづくりとモチベーション維持の方法~

目次

1. はじめに:大人になってからのピアノ学習はなぜ難しい?

大人が新しい趣味としてピアノを始めるのは、決して珍しいことではなくなっています。仕事や家庭など、人生経験を積んだからこそ「ずっと憧れていた楽器に触れたい」「脳の活性化やリフレッシュを兼ねたい」という思いで、電子ピアノやキーボードを買ってみる人が増えているのです。

しかし、そうした“大人のピアノ初心者”たちの多くが、「続くかどうか自信がない」「買っても三日坊主になってしまうのではないか」という不安を抱えているのも事実ではないでしょうか。実際に楽器店やオンラインショップで電子ピアノを購入したあと、最初のうちは盛り上がって練習していても、気づいたらほとんど弾かなくなってしまう――そんな話も珍しくはありません。

なぜ、大人が趣味として始めるピアノは続きにくいのでしょうか。その要因はいくつか考えられます。

  1. 忙しさや時間の制約
    仕事や家事、育児などで時間が限られ、疲れて帰宅すると「今日は練習しなくてもいいかな…」と先延ばしにしがち。
  2. 目標や指針の曖昧さ
    「何となくピアノが弾けるようになりたい」と思っていても、具体的なゴール設定がないとモチベーションが続かない。
  3. 成果が見えにくい
    自分の演奏を客観的に評価する機会が少ないため、「本当に上達しているのか分からない」と感じることが多い。
  4. 周りに同じ趣味の仲間がいない
    一人で練習を続けていると飽きたり孤独に感じたりしやすい。

こうしたハードルを超えるには、ちょっとした工夫が必要です。今回の記事では、「具体的な小さな目標を設定すること」と「周りへ宣言する(やると決めたことを誰かに伝える)」という2つのポイントに注目し、大人のピアノ初心者が挫折しないための方法をじっくり解説します。どれも「意志の力」だけに頼らずに済む仕組みづくりなので、忙しい方でも実践しやすいはずです。ぜひ参考にしてみてください。

2. 大きな目標より“小さな目標”が大事な理由

2-1. 「大曲を弾けるようになりたい」だけでは続かない

ピアノを始めた当初は、「ショパンの曲を弾けるようになりたい」「ジャズの即興演奏ができるようになりたい」といった華やかな目標を思い描く方も多いでしょう。もちろん、そうした“大きな夢”を持つこと自体はとても素晴らしいことです。夢や憧れがあるからこそ、最初の一歩を踏み出すエネルギーにもなります。

しかし、実際に練習を続けていると、最初の挫折ポイントに直面するかもしれません。大人初心者がいきなり難易度の高い曲に手を出すと、なかなか弾けるようにならないうえに、練習しても目に見える進歩を感じにくいからです。「こんなに頑張っているのに、全然形にならない…」とモチベーションが下がってしまうパターンが少なくありません。

2-2. 小さく刻むことで“できる実感”を得やすい

そこでおすすめなのが、小さな目標を複数設定することです。例えば、以下のように、到達点を細分化してみるイメージです。

  • 最初の1週間:右手だけで簡単なメロディを弾けるようになる
  • 次の1週間:左手の簡単な伴奏を付けてみる
  • 1か月後:お気に入りの曲のサビだけでも、両手で弾いてみる

こうした細かいステップを踏むと、「できるようになった!」という達成感をこまめに味わえます。結果として「もっと弾きたい」「次も頑張ろう」という気持ちが育ちやすいのです。人は、努力した成果が見えてくるとモチベーションを保ちやすいもの。大きなゴールが遠いと挫折しそうになる場合でも、身近な目標をこなすことを繰り返していけば、少しずつ前に進んでいる手応えが得られます。

2-3. 短時間練習でも効果があると分かる

「小さな目標」は、練習時間が限られている大人にも有効です。たとえ1日5分や10分でも、「今週は右手のフレーズを覚える」という具体的なタスクがあれば、その短い練習でも達成感や進捗を感じられます。

一方で、漠然と「いつか上手に弾けるようになりたい」とだけ思っていると、1日数分の練習では「本当に意味があるのだろうか…」とモチベーションが下がってしまうのです。だからこそ、小分けにしたゴールを設定することが鍵になるわけです。

3. 小さな目標をどうやって作る?実践的な例

3-1. “段階的”な曲選びをする

小さな目標を設定しやすくする方法の一つが、自分が好きな曲を数小節ずつに分けて練習するというものです。例えば、サビだけをピックアップし、まずは右手のメロディを3日かけて覚える。その後、1週間目で左手をつけてみる、といった具合です。

初心者用にアレンジされた楽譜や、音数の少ない簡単バージョンの譜面などを活用すれば、より取り組みやすくなります。「フルコーラス弾けなくても、サビだけ形になれば満足度が高い」曲も多いので、自分が弾きたい曲の中から最も馴染み深い部分を切り出して練習してみてください。

3-2. “毎日5分”の練習を目標にする

「毎日1時間練習する」のように大きく構えると、忙しい大人にとってはハードルが高く、挫折の原因になります。そこで、「とにかく毎日5分は鍵盤に触れる」というくらいの小さな目標を掲げてみるのはいかがでしょうか。5分という短い時間なら、朝起きてすぐ、あるいは寝る前にちょっとだけ――という形で続けられる可能性が高いでしょう。

ポイントは、5分弾いてみたら「もう少し弾きたい」と感じることもあるし、そうでなければ5分で切り上げてもOKという柔軟なスタンスを取ることです。大切なのは「一日も鍵盤から離れない」ことであり、それさえ続けば自然と慣れが生まれ、指や耳が少しずつ鍛えられていきます。

3-3. 週ごと・月ごとのテーマを決める

もっと長いスパンで管理したい方は、週ごと・月ごとにテーマを決めるのも一つの手です。例えば、1か月単位で見たときに、最初の週は「この曲の前半部分を両手で合わせられるようにする」、次の週は「後半を右手だけさらう」、3週目は「全体を少しずつ通して弾く」、4週目は「苦手部分の反復練習」といった感じです。

このように、期間を決めて取り組むことで、練習スケジュールが立てやすくなりますし、「ここまで弾けた」という進捗がクリアになります。漠然と弾きたい曲を流しているだけだと、いつまで経っても“できるようになった”感覚を得にくいため、挫折を防ぐにはテーマ設定が重要といえるでしょう。

4. 「やる」と決めたことを周りに宣言するメリット

4-1. 自分だけの思い込みで終わらせない

いくら小さな目標を立てても、それを“誰にも言わずに自分一人で抱えている”と、モチベーションが下がったときに簡単に諦めてしまいがちです。「ま、やめちゃっても誰も気づかないし…」という気持ちになってしまうことがあるからです。

そこで有効なのが、周りの人に「やる」と宣言してしまうこと。家族、友人、同僚、SNSのフォロワーなど、誰でも構いません。「今月中にこの曲のサビを両手で弾けるようになるから、聴いてね」「毎日5分は弾くと決めた」など、自分の口から相手に伝えてしまうと、意外と簡単に投げ出せなくなるのです。

4-2. 応援や反応が励みになる

「弾けるようになったら動画を撮って送るね」と家族に伝えておく、「SNSで練習の進捗をちょこっと報告する」といった工夫をするだけで、周りからちょっとした反応がもらえるかもしれません。「すごい!」「頑張ってるね」という言葉は大人でも嬉しいものです。それが次の練習へのエネルギーになり、また一歩踏み出そうという気持ちが湧いてくるでしょう。

さらに、同じように大人ピアノを頑張っている仲間を見つけられれば、お互いに進捗を報告し合って刺激を受けることもできます。ちょっとしたコミュニティを作るだけでも、孤独感や飽きが減り、長続きしやすい環境を整えられるのです。

4-3. 「恥ずかしい」は最初だけ

とはいえ、大人になると「下手な演奏を人に聴かせるなんて恥ずかしい」と感じる人も少なくありません。特にSNSなど不特定多数が見る場所に投稿するのは抵抗があるかもしれません。しかし、そもそも大多数の人は「完璧な演奏を求めているわけではない」ことを理解しておきたいところです。

ピアノがうまく弾けるかどうかよりも、「頑張っている姿が素敵」「大人になっても新しいことに挑戦しているんだ」といった部分に好感を持つ人は多いです。もちろん、無理に公開する必要はありませんが、「思い切って誰かにシェアしてみる」と、自分の練習意欲がぐっと高まる可能性があることは覚えておいて損はないでしょう。

5. 忙しい人でも実践しやすい仕組みづくり

5-1. ピアノの場所を工夫する

大人が挫折しやすい理由のひとつに、「練習スペースが準備しにくい」という現実があります。ピアノを部屋の奥まったところに置いていると、「弾きたいと思ったときに移動が面倒で、つい後回しになる」という事態もよく起こります。そこで、できるだけ生活動線の近くにピアノを配置し、思い立ったらすぐ座れるようにセッティングしておくことが大切です。

また、電子ピアノの場合はヘッドホンを活用することで深夜や早朝でも練習できるので、「忙しくても1日5分は弾こう!」という目標を達成しやすくなります。鍵盤を見える場所に置くことで、「今日はまだ触ってないな」と気づきやすくなるのもポイントです。

5-2. スケジュール帳やアプリで“実績”を記録する

「小さな目標」を立てたら、その日ごとに達成できたかどうかを可視化してみましょう。紙のスケジュール帳に「○分練習した」などとシールを貼る人もいれば、スマホの習慣管理アプリで記録する人もいます。

ちょっと面倒そうに思うかもしれませんが、ほんの一手間をかけるだけで「今日はちゃんと弾いたな」「先週は練習時間が少なかったから、今週は頑張ろう」という見返りが得られます。こうした小さな達成の積み重ねは意外に大きく、継続の原動力になってくれます。

5-3. 小さいご褒美を設定する

特に忙しい人ほど、趣味の時間を確保するのは容易ではありません。そこで、自分自身を少しでも奮い立たせるために、小さなご褒美を設定してみるのも手です。「1週間で目標を達成したら、週末にちょっとしたスイーツを食べる」とか、「1曲通して弾けるようになったら、前から欲しかった楽譜を買う」など、何でも構いません。

大きなご褒美だと経済的な負担になりますが、小さなものなら気軽に取り入れやすいでしょう。「頑張ったら自分にプチご褒美」というスタンスを持つと、「あと一踏ん張り」へのモチベーションが上がります。

6. 短期間で激変しなくても大丈夫! 成長を噛み締めるコツ

6-1. 過去の自分との比較を心がける

大人がピアノを始めると、どうしても「子どものころから習っていた人にはかなわない」とか、「SNSで見かけた上手な演奏には遠く及ばない」というネガティブな感情を抱きやすいです。すると、自分が成長しているのかどうかイマイチ分からなくなり、「もういいや……」と投げ出してしまいがち。

しかし、比較すべきは“他の誰か”ではなく、過去の自分です。1週間前、1か月前よりも弾ける範囲が増えていれば、それは立派な成長。動画や音声で録音しておくと、自分の変化がわかりやすくなり、モチベーションを上げるきっかけになります。

6-2. “前できなかったことが、今はできる”を積み重ねる

ピアノの楽しさのひとつは、「できなかったフレーズが弾けるようになる」瞬間にあります。特に初心者のうちは、ほんの少し指が動くようになるだけでも、「お、ちょっとずつ上手くなってる」と実感しやすいところが魅力です。

最初は簡単な左手のコードを押さえるだけ、指番号を覚えてメロディをなぞるだけ……という段階かもしれませんが、それが数週間後にはもう少し難しい部分に挑戦できるようになっているはずです。この“段階的な成長”を楽しむことが、大人の趣味を長続きさせるコツといえます。

6-3. “上手に弾けるようになること”だけが全てではない

大人のピアノ学習は、必ずしも演奏技術だけがゴールではありません。音を出す楽しさ、指を動かすことで気分転換になる感覚、好きな曲に触れている喜び――こうした要素も大切です。

中には「ピアノを弾いていると無心になれて、仕事のストレスが軽減される」という方もいるでしょう。こうした付加価値に目を向けると、「上手くならないからやめよう」という考えに陥らずに済みます。大きな成長がなくても、ピアノを触る時間そのものに癒やしや満足感があるのであれば、それだけでも続ける理由としては十分です。

7. 具体的な練習方法とコミュニティ活用

7-1. 教材やアプリを活用する

独学だと先が見えにくい場合は、初心者向けの教材やレッスンアプリを活用してみるのもおすすめです。書店で手軽に手に入る入門書や、ネットで人気の動画レッスンなどを試してみると、練習メニューや指使いがわかりやすく示されている場合があります。

特にレッスンアプリだと、ゲーム感覚でスコアを記録してくれたり、進捗を管理してくれたりするものがあり、一人でも継続しやすい環境を作ってくれるでしょう。こうしたアプリを活用することで、毎日少しずつ達成度を上げていく楽しみも増えます。

7-2. オンラインコミュニティやサークルに参加する

大人でも参加できるピアノのサークルやオンラインコミュニティが、近年は増えています。SNS上で「大人ピアノ初心者」と検索すれば、同じ境遇の人たちが情報交換をしているグループを見つけることも可能です。

こうした場で、弾いてみた動画や音声を共有し合うのに抵抗がなければ、お互いに励まし合える仲間ができます。「練習している曲は何?」「どんな教材がわかりやすかった?」といった何気ないやり取りが、練習に向かう原動力になるでしょう。一人きりで淡々と練習していると感じていた孤独感も、仲間が見つかると一気に楽しさが広がります。

7-3. 時には個人レッスンも検討してみる

予算や時間に余裕がある方は、個人レッスンを定期的に受けることも選択肢に入れてみてください。人によっては「月1回」程度でも充分です。先生の目から見たアドバイスを受けることで、「今どのくらいのレベルにあるのか」「どんな練習をすれば効率がいいのか」が明確になり、モチベーションが保ちやすくなります。

また、先生に「今月はここまで弾けるようになりましょう」と具体的な宿題をもらう形にすれば、小さな目標が自動的に設定されるので、独学のときよりも高い確率で続けられるでしょう。レッスン料の負担はかかりますが、それをメリットに変え「せっかくお金を払っているんだから頑張ろう」という気持ちになれる方も多いです。

8. 継続して得られるメリットを再確認

ここまで「小さな目標を設定すること」と「周りへ宣言してみること」の大切さについて、具体的に紹介してきました。最後に、それらを実践してピアノを続けた先に得られるメリットをあらためてまとめてみましょう。

  1. ストレス解消やリラックス効果
    指先を使ってメロディを奏でる行為は、頭を使いながらも不思議と心を落ち着かせてくれます。忙しい日々の中で、ピアノが癒やしの時間になることも。
  2. 達成感と自己肯定感の向上
    小さな目標を積み重ねることで、「自分にもできた」という成功体験を得られます。大人になるとなかなか褒められる機会は減りますが、自己肯定感が高まると日常生活にも良い影響が及びます。
  3. 脳や指先のトレーニング
    ピアノは脳と身体を連動させるため、程よい刺激となり、いわゆる“脳トレ”としても効果が期待できます。年齢を重ねても新しいことにチャレンジしていると、日々が生き生きしてくるかもしれません。
  4. 人とのつながりが広がる
    宣言やSNSでの発信を通じて、同じ趣味を持つ仲間や理解者が見つかるかもしれません。新しいコミュニティができると、人生に新たな彩りが加わります。

大人になってからピアノを始めるのは、決して遅いわけではなく、むしろ充実感の高い体験になるはずです。ぜひここで紹介した方法をうまく活用し、「続くかどうか分からない…」という不安を解消してみてください。

9. まとめ:「小さな目標」と「周りへの宣言」で挫折を防ごう

大人のピアノ初心者が続かない最大の理由は、実は「自分の意志が弱いから」ではありません。忙しい日々の中で練習が途切れてもおかしくないし、見えにくい上達度に不安を感じるのはごく自然なことです。だからこそ、小さな目標を刻んで達成感を味わいながら進めること。そして、自分ひとりで抱えこまず、周りに宣言して応援や共感を得ることが、挫折を防ぐうえで大きな助けとなります。

  • 小さな目標
    「1日5分弾く」「今週はこのフレーズだけ」「1か月で1曲のサビを仕上げる」など、達成しやすく、成果を実感しやすい設定をする。
  • 周りへの宣言
    家族や友人、SNSなどで「この曲を弾けるようになる」と宣言し、定期的に進捗を報告する。周りからの声がモチベーションを高めてくれる。

どちらも特別な才能や資金が必要なものではなく、少しの工夫で始められます。「せっかく電子ピアノを買ったのに、結局物置き台と化してしまった…」という悲しい結末を避けるためにも、ぜひ早い段階からこうした仕組みづくりを取り入れてみてください。

大人のピアノ学習は、音楽を奏でる楽しみだけでなく、日常に新しい活力と喜びをもたらしてくれます。一度きりの人生、思い立ったときにこそ新しい扉を開いてみませんか? 小さな一歩の積み重ねと、宣言の力で、気づけば「いつの間にか上達していた!」という未来が待っているかもしれません。忙しさや不安に負けず、ぜひピアノのある暮らしを続けていきましょう。応援しています!

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