はじめに: ピアノを「楽しみながら続ける」ために
大人になってからピアノを始めたいと思っても、踏み出すまでに時間がかかることは珍しくありません。忙しい生活の中で新しいことを学び始めるのは、何かとハードルが高く感じられるものです。「本当に弾けるようになるのか」「うまくいかなかったらどうしよう」という不安が大きいと、行動に移すのをつい先延ばしにしてしまいがちです。 しかし、もし練習の過程を「楽しみながら続けられる工夫」があれば、あなたの気持ちはぐっと前向きになります。ここでは、ゲームのように小さな成功を積み重ねて達成感を得るやり方を取り入れることで、「面倒そう」「大変そう」といった印象をやわらげるヒントをお伝えします。 「誰でも最初は初心者」「失敗も含めてプロセスが大事」と頭ではわかっていても、なかなか自分の中で納得できないこともあるでしょう。そんなときこそ、こまめに小さな目標を設定してクリアしていく手法が大きな力になります。ぜひ最後まで読んでいただき、あなたに合った取り入れ方を見つけてみてください。
小さな目標を設定する意味
最初に大切なのは、「小さい目標をこまめに設定すること」にどんな意味があるかを理解することです。一言でいうと、「行動するためのハードルを下げる」ための工夫の一つです。大きすぎる目標を立ててしまうと、達成するまでに時間も労力もかかり、「まだできていない」という状態が続きます。その結果、モチベーションが下がってしまいがちです。 たとえば、「3か月でショパンのバラードを弾けるようになる」という大きなゴールをいきなり立てるとします。目標自体は素晴らしいのですが、実力や練習時間によってはかなり高いハードルになります。「こんなに進まないものなのか」と思ってしまうと、途中で心が折れてしまうかもしれません。 しかし、大目標を達成するために「その日の右手のパートをゆっくりと5回通してみる」「1小節ずつリズムの確認をしてみる」といった小さなステップを設定すれば、1回1回達成感を味わいやすくなります。これはゲームを進めていくときの「ステージクリア」「経験値ゲット」のようなイメージです。小さな区切りで達成感が生まれれば、次のステップへの意欲も高まり、「もう少しだけがんばろうかな」というプラスの気持ちになれます。
練習の過程を「ゲーム的」に捉えるメリット
1. 結果より過程を楽しめるようになる
「弾けるようになるまで」が長く感じられると、どうしても途中で飽きたり辛くなったりしてしまいます。そこで、あえて「練習そのもの」を小さなミッションの集合体に見立ててみると、いま目の前でやっていることが少しずつ面白く感じられます。 ゲームでは、クエストをクリアすると報酬や次のステージへの切符が手に入るイメージがありますよね。ピアノの練習でも、1曲を「イントロ」「Aメロ」「Bメロ」「サビ」のように区切ってクリアしていくと、「もうイントロだけ弾けるようになった!」という形で区切りの達成感を味わえます。最終的に曲全体を弾けるようになるのは先でも、過程ごとに楽しみを見いだせるのが大きなポイントです。
2. 自己肯定感が高まりやすい
ゲームは基本的に「頑張れば進める」仕組みが整っています。ピアノも、手順や練習量をきちんと確保すれば誰でも少しずつうまくなるはずです。そこで、自分で小さなステージを設定してクリアしていくと、自分を褒める機会がぐんと増えます。 人は「うまくいった」と感じられる回数が多いほど自信を持ちやすくなり、「もっとやれるかも」「もう一歩やってみよう」というやる気につながります。ささいな進歩でも「今日ここまでできた」という手応えがあると、くじけにくくなるのです。
具体的な「小さな成功体験」の作り方
1. 練習ログをつけて点数化してみる
日々の練習の積み重ねを「見える化」することはとても大切です。たとえば、ノートやアプリを使って「弾けた回数」や「今日できたこと」を記録し、簡単に点数をつけてみる方法があります。 – 右手だけなら8割弾けた → 80点 – 両手で合わせてみたが途中で止まる → 50点 – ミスはあるけれど曲の最後まで通せた → 70点 毎日つける点数に厳密さは必要ありません。「自分の気持ち的には60点くらいかな」という、ざっくりした主観的評価で構いません。重要なのは、「昨日より5点でも上がった」「今日は久しぶりに70点を超えた」など、数値の変化を見ることで小さな進歩を実感することです。
2. 1曲を細かく区切って練習する
たとえば、好きな曲をまるごと最初から最後までいきなり練習しようとすると、思うように弾けなくてストレスを感じるかもしれません。そこで、その曲をパートごと、さらには小節単位で区切って練習するのがおすすめです。 – まずはイントロだけ – Aメロの前半だけ – Aメロの後半だけ – Bメロ、サビ… このように区切ることで「一区切りつくたびに成功を味わう」機会が増えます。あるパートが弾けるようになったら、「今日のミッション達成!」と自分でしっかり認識すると、練習に対する充実感が増していきます。
3. タイマーを使って短い目標を繰り返す
長時間やるぞと意気込むと、「1時間も練習しないといけないのか」と気負いすぎて逆にやる気が出ないこともあります。そんなときは短時間練習をゲームのように組み合わせる方法がおすすめです。 – 10分だけ集中して左手の伴奏を確認する – 休憩をはさんで次の10分で右手のメロディを合わせる – さらに次の10分で両手を合わせてみる このように10分×3セットの「練習クエスト」をこなすだけでも、合計30分きちんと練習できます。「まず10分クリア」と区切ることで、「やってみようかな」という心理的ハードルを下げられるメリットがあります。
4. 自分なりのご褒美を設定する
小さな成功体験に対しては、そのたびに自分自身への小さなご褒美を設定してみましょう。例えば、「1つのパートが弾けるようになったら、ずっと食べたかったスイーツを買いに行く」「週のうち5日練習できたら、前から欲しかった楽譜を購入する」といった具体的なものです。 ゲームの世界では、ステージをクリアするとアイテムやポイントなどの報酬がもらえます。その感覚を現実のピアノ練習に持ち込むのです。些細なことかもしれませんが、こうした小さな楽しみがあるだけでモチベーションは大きく変わります。「もう少し頑張ったらスイーツが待っている!」と心が弾み、練習の辛さを乗り越えやすくなるでしょう。
「どうせ自分には無理」という気持ちへの対処
小さな成功体験を重ねる方法は、実は「どうせ自分はできない」と感じている人に特に効果的です。大人になってから何かを習得する際、年齢や時間の制限を意識してしまい、自分の可能性を狭めてしまうことがあります。 しかし、成功体験を細かく刻むことで、「ここまでなら自分にできそう」と思える範囲が広がります。1つクリアすれば「意外とできるじゃん!」というプラスの気持ちがわいてきて、その次のステップにも踏み出しやすくなります。 また、練習が続かず途中で挫折してしまったというトラウマがある方も、小さな一歩から始めると失敗のリスクが減ります。大きな挑戦をして一度の失敗で大きく落ち込むよりも、「小さい成功と小さい失敗を積み重ねる方が練習全体のモチベーションは保ちやすい」というのが実感しやすくなるのです。
仲間と小さな成功を共有するアイデア
趣味であっても、孤独にコツコツやるよりは、誰かと一緒に取り組むほうが楽しいことが多いです。もし同じように「ピアノを始めたい」と思っている友人がいれば、一緒に小さな成功を共有し合うとさらにやる気が続きます。
1. SNSやグループチャットでの進捗報告
最近はSNS上で「#大人のピアノ初心者」「#今日の練習記録」などのハッシュタグをつけて練習動画や感想を共有している人も少なくありません。恥ずかしくなければ動画を撮って進捗を残してみるのも、日々の成果を見える形にしていく方法の一つです。 もし顔出しや音源アップに抵抗があるなら、文字だけでも十分です。今日クリアした目標や、「今日はここまで弾けた!」という感想を投稿するだけでも、「頑張ってるんだな」「私も負けずに頑張ろう」と前向きなやり取りが生まれやすくなります。
2. 小さな発表会を企画する
教室や音楽仲間同士で「ミニ発表会」を開催するのもおすすめです。大規模な発表会だと準備も大変ですが、仲の良い友人や知り合い数人と簡単なセッションを企画してみるだけでも「その日に向けてちょっと頑張ろう」と気持ちが高まります。 たとえば、半年後に小さな音楽パーティーを開くと決めておけば、「それまでにこの曲のサビだけでもきれいに弾こう」といった具体的な小目標が設定できます。「全部完璧にするのは厳しいけれど、ここだけはしっかり弾けるようにしておきたい」という気持ちが、練習を前向きに進めるエンジンになってくれます。
練習のマンネリを防ぐための工夫
どんなにモチベーションを維持しようとしても、同じ曲や同じ練習メニューが長く続くとマンネリ化してしまうこともあります。小さな成功を積み重ねるコツを取り入れていても、練習内容が単調で飽きてしまうと意味がありません。
1. 曲のジャンルを混ぜてみる
練習曲がクラシックばかりなら、思い切ってポップスやアニメソング、ジャズ、映画音楽なども取り入れてみましょう。「クラシックだけに集中しなければ上達しない」と考えがちですが、実は色々なジャンルに触れることで新鮮味が増し、指使いの幅や表現力が広がるメリットもあります。 好きな曲の譜面をいくつか並行して練習すれば、「今日の気分はポップスだからこれをやってみよう」「昨日クラシックがんばったから今日は映画音楽に挑戦しよう」というように、気分転換をはかりやすくなります。ジャンルを変えたところで、「小さなパートを区切って成功体験を得る」というコツは変わりません。
2. 新しい練習ツールを試してみる
ピアノ練習をサポートするアプリやオンラインサービスは多種多様に存在します。電子ピアノと連動して楽譜の進行に合わせて鍵盤が光るものや、自分の演奏を録音してAIがフィードバックしてくれるツールなどもあります。 こうしたツールを活用すると、自分自身では気づきにくいミスを客観的に確認できたり、ゲーム感覚でレッスンを進められたりします。最初は扱いに戸惑うことがあるかもしれませんが、「こんな便利な練習法もあったんだ」と発見するだけでも意欲が刺激されるでしょう。
3. 教材や先生を定期的に変える勇気を持つ
実際にピアノを教わっている場合、先生との相性や教材の内容があまり合わないと感じたら、思い切って変える選択肢を考えてみても良いでしょう。相性が良い指導者や教室に巡り合えば、小さなステップを正しく褒めてくれて、適切に次の課題を用意してくれるので、楽しく続けやすくなります。 長く通っていると惰性で続けてしまうこともありますが、合っていない環境で頑張り続けるのは大人にとっては結構なストレスです。自分のモチベーションが落ちてきたときは、「ほかにもっと合う先生がいるかもしれない」と視野を広げるのもひとつの方法です。
忙しい大人こそ「短時間練習」で達成感を味わう
大人の場合、仕事や家事、育児など、毎日こなさなければならないことがたくさんあります。ピアノの練習時間を長く確保するのは難しく感じることも多いでしょう。そこで役立つのが「短時間集中の小目標」です。 一日30分の練習時間を確保できなくても、朝5分、昼5分、夜5分など、隙間時間を積み重ねて15分練習してみるだけでも効果はあります。1回1回の短い練習でも、「5分×3回をクリアした」と自分で目標を設定しておけば、少なくとも1日1つの小さな達成感を味わえます。 もし週末にもう少しまとまった時間を取れそうなら、「週末は合計1時間弾く」というボーナスステージを用意するイメージです。普段は短い練習を積み重ね、時々少しまとまった練習を取り入れることで、メリハリのある学習リズムを作れます。
上達を実感しやすくする「自分なりの指標」を作る
小さな成功体験の積み重ねをより楽しくするには、「上達の度合いを自分なりに計測する指標」を設定しておくことも有効です。ただし、あまりに厳密すぎるとストレスになるので、あくまで「自分でわかる」程度で問題ありません。
1. 以前録音した演奏と聴き比べる
普段の練習をスマホなどで録音しておくと、以前の自分の演奏と現在の演奏を聴き比べることができます。とくに「最初はテンポが安定していなかったけど、今はほとんど乱れなく弾ける」といった変化は、客観的に聴くとかなりの上達として感じられるものです。 録音を聴き返すのは恥ずかしいと感じるかもしれませんが、上達の記録としては非常に役立ちます。「こんなに下手だったのか」とショックを受ける部分もあるかもしれませんが、それだけ伸びしろがあるということの証明でもあります。少しずつでも過去の録音より良くなっていれば、それは立派な成功体験です。
2. 「弾ける曲リスト」を作る
弾けるようになった曲が増えたら、そのリストを作っておきましょう。弾き始めた頃は「1曲を最後まで弾けるだけでもすごいこと」だったのに、半年後には「3曲くらいはそれなりに形になっている」状態になっているかもしれません。 リストを作ることで、うまくいかない日があっても「でも、この曲とこの曲はもう弾けるんだよな」と事実を確認できます。一歩引いて自分の成長を見られるので、練習に迷いが生じても自信を取り戻しやすいのがメリットです。
モチベーション低下時のリカバリー策
どれだけ工夫していても、時にはモチベーションが落ちてしまうことがあります。仕事やプライベートが忙しくなると、練習したくても体力や時間が足りなくなることもあるでしょう。
1. あえて「今日は休む日」を設定する
無理に毎日練習しようとしても、疲労がたまって嫌気が差す場合もあります。そんなときは、自分で「休む日」を決めてしまいましょう。あらかじめ計画的に休むことで罪悪感を軽減し、心身のリフレッシュにもつながります。 休んだ日は次の日からまた短い練習を再開すればOKです。「休みを取るのも学習計画の一部」という考え方を取り入れると、スケジュール管理が楽になり、続けやすくなります。
2. 「自分だけの課題曲」を思い切って変更する
いま練習している曲がどうしても進まなくてストレスになっているなら、思い切って曲を変えるのも手です。もちろん、途中で投げ出すようで後ろめたさを感じるかもしれませんが、曲を変えることで心がパッと明るくなるなら、先に進むための前向きな選択だと考えてみてください。 新しい曲なら「最初のパートを弾けるようになるだけでも嬉しい」と感じるかもしれません。そうした小さな喜びを再び味わえるようになれば、今の停滞感から抜け出せる可能性があります。
大人ならではの強みを活かそう
大人からピアノを始めると、子ども時代から習っていた人と比べて「上達が遅いのではないか」と不安を抱くかもしれません。しかし、大人だからこそ活かせる強みもたくさんあります。
1. 好きな曲や学びたいスタイルを自分で選べる
子どもの頃は与えられた練習曲をこなすことが多いですが、大人は自分で楽譜を選んだり、好きなジャンルに挑戦したりと自由度が高いです。つまり、「自分のモチベーションを高められる素材」を選べるのです。好きな曲なら「この部分だけでも早く弾けるようになりたい」という気持ちが自然とわいてくるため、小さな成功体験の積み重ねがよりポジティブに作用します。
2. 自分のペースでスケジュールを組める
大人は忙しい反面、「今日は仕事が落ち着いたからいつもより長めに練習しよう」「週末にまとめて練習時間を作ろう」といった調整を自分の裁量で行える場合があります。毎日少しずつ練習するのが難しい日々が続くこともあるかもしれませんが、スケジュールを俯瞰して「来週の休日に2時間まとめてやろう」と計画できるのも大人の強みです。 このように自分のライフスタイルに合わせて柔軟に取り組めるのは、子どもよりも大人のほうが得意と言えるでしょう。
「飽き」や「不安」に負けずに続けるために
ピアノの練習にはコツコツとした積み重ねが必要ですが、一方で「飽き」や「自分に弾けるのか」という不安がつきまとうことも確かです。そうしたときにこそ、小さな成功の積み重ねで得られる達成感を自分の力に変えていくのが大切です。 – 弾いている途中で飽きそうになったら、次の練習ステップを短く切ってしまう – 大きな曲に取り組むときは、無理なくクリアできるパートから始める – 日々の練習ログや録音で、自分が前に進んでいることを確認する – 同じ目標を持つ仲間と進捗を共有し、刺激を受け合う こういったことを意識していくと、「今日は思うように弾けなかった」と感じる日があっても、翌日に立ち直りやすくなります。
まとめ: 小さな成功体験が大きな夢につながる
ピアノを習いたいけれど一歩を踏み出せない、あるいは始めたはいいものの継続する自信が持てないと感じているのであれば、ぜひ「小さな成功を積み重ねる」練習スタイルを試してみてください。やり方はとてもシンプルです。 – 大きなゴールを目指すより、まずは小さなゴールを設定する – 練習の過程を区切りながら進めて達成感を味わう – 進捗を記録し、できれば数値や録音などで見える形にする – 自分なりのご褒美やちょっとした報酬を用意する – 練習を続けている仲間と励まし合う この積み重ねによって、「やればちゃんとできるんだ」という実感と、純粋にピアノを弾くことの楽しさを得やすくなります。大人になってからスタートしたとしても、楽しく続けていけば、予想以上に自分の世界を広げられるはずです。 最初はほんの小さな一歩かもしれません。でも、その一歩が何度も重なっていくうちに、弾ける曲は増え、表現力は豊かになり、心も豊かになるでしょう。ぜひ「小さな成功体験」を毎日の練習に取り入れ、あなたが思い描く音の世界へ踏み出してみてください。あなたが手にしたい憧れのフレーズや、一度は諦めかけた名曲も、少しずつなら着実に近づいていけるはずです。
Synthesiaを使ったピアノ練習について
SynthesiaFanでは下記のようなピアノ未経験者の練習・独学を支援する情報を載せています。
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参考リンク
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