ピアノ初心者におすすめの教本 バイエル
ピアノを始める際、どの教本を選ぶべきかは多くの人が悩むポイントです。その中でも、長い歴史を持つBeyer(バイエル)は初心者向けの教本として幅広く支持されています。本記事では、Beyerの特徴や魅力を紹介しながら、ソナタに到達するまでの練習の流れや必要な練習期間について詳しく解説します。
Beyer(バイエル)の特徴
1. 歴史的な背景
Beyerは19世紀にドイツのピアノ教師フェルディナンド・バイエルによって作られた教本です。その後150年以上にわたり、世界中のピアノ初心者に愛されてきました。特に日本では、ピアノ教育の基盤として長年親しまれています。
2. 段階的な進行
バイエルの最大の特徴は、簡単な曲から始まり、少しずつ難易度が上がる構成です。初めて楽譜を読む人でも無理なくステップアップできるよう工夫されています。
3. 基本的な音楽理論の学び
Beyerは演奏技術だけでなく、音階やリズム、拍子など音楽の基本理論も自然に身につけられるよう設計されています。
4. 日本のピアノ文化との親和性
日本のピアノ教育において、バイエルを基礎にしたカリキュラムが多いため、他のレッスン教材や指導法と相性が良いのもポイントです。
ソナタに到達するまでの練習の流れ
ピアノ初心者がBeyerを始めてからソナタの演奏を目指すまでには、大まかに次のような段階を経ることが一般的です。
1. 基礎段階(バイエル初級:1〜40番)
この段階では、楽譜の基本的な読み方や両手の独立した動きを学びます。具体的には次の内容が含まれます。
- 五線譜の読み方(ト音記号とヘ音記号)
- 両手の指使いと基本的なリズム
- 簡単な拍子(4分の4拍子、3分の4拍子など)
曲の長さや難易度が低く、初心者がスムーズにピアノに慣れることを目指しています。
練習期間の目安:1〜3か月
初心者が無理なく練習を進めた場合、この段階は比較的短期間で終了します。1日15〜30分の練習を続けることで、手と耳をピアノに慣らすことができます。
2. 中級段階(バイエル中級:41〜70番)
中級段階では、技術的な要求が少し増え、以下のスキルを習得します。
- 左手の伴奏パターン(アルペジオや和音の進行)
- 簡単な和音を含むメロディの演奏
- テンポを一定に保ちながら演奏する練習
この段階では曲がやや複雑になり、音楽的な表現力を磨くことが求められます。
練習期間の目安:3〜6か月
曲ごとに異なる技術を習得するため、練習には集中力が必要です。この段階を終えることで、ピアノ演奏の基礎が一通り完成します。
3. 応用段階(バイエル後半:71〜106番)
バイエルの最終段階では、より高度なテクニックと音楽的表現を学びます。
- 両手で異なるリズムを演奏する練習
- 音階(スケール)やアルペジオの初歩的な練習
- スタッカートやレガートといった基本的な演奏技法
この段階では、曲の構成が複雑になり、より音楽的な演奏が求められます。
練習期間の目安:6〜12か月
特に後半の曲は初心者には難易度が高いため、指導者の助けを借りながら進めるのがおすすめです。この段階を終えることで、ブルグミュラーやソナチネなど、次のステップに進む準備が整います。
4. ブルグミュラーとソナチネへの移行
バイエルを終了したら、次のステップとして「ブルグミュラーの25の練習曲」または「ソナチネアルバム」に進むのが一般的です。
- ブルグミュラー:テクニックを強化しながら、音楽的な感性や表現力を養う練習ができます。
- ソナチネ:古典派の形式や表現を学び、より高度なテクニックに挑戦します。
一般的には、ブルグミュラーの練習曲を先に学び、基本的なテクニックを固めた後にソナチネへ進むと効果的です。ただし、個人の進度や目標によって順序は調整可能です。
練習期間の目安:ブルグミュラーで1年、ソナチネでさらに1年程度
これらを終えると、モーツァルトやベートーヴェンの簡単なソナタ(ソナタアルバム)にも挑戦できるようになります。
ソナタ演奏までの総練習期間
初心者がBeyerを始めてからソナタを演奏できるようになるまでの目安期間は、約2〜3年です。以下の要因が進行速度に影響します。
- 練習時間
- 1日15分の練習:進行はゆっくりですが、確実に基礎を固められます。
- 1日30分〜1時間:習得が速くなり、音楽的な成長も感じやすいです。
- 指導環境
経験豊富な指導者の元で練習することで、効率的に上達できます。独学の場合は、正しい姿勢や指使いを意識することが重要です。 - 個人の素質と目標
集中力や音楽への興味、手の器用さなども影響します。ただし、最も重要なのは「継続すること」です。
Beyerを活用する際のポイント
- 目標を設定する
「3か月後に中級段階を終える」など、具体的な目標を立てるとモチベーションが保てます。 - 練習をルーティン化する
毎日同じ時間に練習する習慣をつけると、効率的に上達します。 - 補助教材を併用する
Beyerに加え、リズム練習や簡単な音階練習を取り入れることで、基礎力がさらに強化されます。
Beyerの魅力:音楽の旅の第一歩
Beyerは単なる教本ではなく、音楽の基礎を築きながら「ピアノの楽しさ」を教えてくれる存在です。ソナタ演奏を目指す過程では、多くの壁にぶつかることもあるでしょう。しかし、その一歩一歩の積み重ねが、豊かな音楽体験につながります。
初心者の方も、再挑戦を考えている方も、ぜひBeyerを手に取って音楽の旅を始めてみてください。その先には、きっと美しいメロディが待っています。
バイエル教則本の入手
オススメ教則本
記入することがあるので、紙の本で入手するのが良いと思います。
バイエル教則本は多数出版されていますが運番号(指つかい)が記載されたものがオススメです。
特にこちらがオススメです。指番号の記載のない教則本に後々、指番号を記入する手間を考えるととても安いです。
メルカリでも時々出品されているので、中古でも構わなければ確認してみるのも良いかもしれません。メルカリ以外でも中古として購入する場合は、40番以降のページに前購入者の記入跡が無いかを確認してから取引・購入を進めましょう。実物を見てから買うのが良いですが、中規模の本屋、大型楽器店の楽譜コーナーでも置いていない店が多々ありました。探している時間と移動が勿体ないのでアマゾンで購入するのが手早いです。
無料で楽譜を入手したい場合
もし楽譜にお金をかけたくない人はIMSLPからPDFをダウンロードしましょう。
https://imslp.org/wiki/Vorschule_im_Klavierspiel,_Op.101_(Beyer,_Ferdinand)
IMSLPから寄付を求められる画面に遷移すると思いますが、15秒待って出現する「ダウンロードを再開するにはこちらをクリックしてください。」の文字をクリックすると無料で黄色い表紙の本のPDFを入手できます。
もちろん、もし構わなければ登録や寄付を行っても良いと思います。
楽譜は記入して勉強するのに便利なので、できれば書籍になっているものの購入をオススメします。
- オススメのバイエル教本
- その他のバイエル教則本
- バイエル併用について
- 著作権切れ楽譜はIMSLPで調べよう
- IMSLPからのバイエルダウンロードに関する著作権の話の補足
その他のバイエル教則本
ほかにもいろいろなバイエルの楽譜が販売されているので、amazonでちらっと見てみると良いかもしれません。
中古でも構わなければ、フリマサイトや古本屋で探すのもオススメです。案外良い状態のものが入手できます。
フリマサイトでの楽譜購入に際しては、書き込みがない事を売主に確認してから購入しましょう。
フリマサイトに興味があるけれど、まだ利用していない方はこちらに進め方をまとめました。
バイエル併用について
検索した中で「バイエル」と書いてあっても「バイエル併用」は「バイエル」教則本ではありません。
「バイエル併用」は「バイエル」と同じぐらいの難易度の曲が入っていますよ、ということであって、バイエルの練習だけでつまらなくなってきたときの気晴らし用副教材として使います。「バイエル60番~」などと記載されているので、「バイエル」教則本の進捗に合わせて、「バイエル」に飽きたときに練習してみると良いかもしれません。
著作権切れ楽譜はIMSLPで調べよう
バイエル教則本の楽譜のPDF入手でIMSLPを紹介しました。
IMSLPは著作権切れの楽譜が保管されたパブリックドメインサイトです。古い楽譜であれば、PDF形式でダウンロードできます。
楽譜をダウンロードしようとすると、「自国の著作権侵害しないか確認しましょう」、という内容の確認が出ます。
日本の著作権は著作者の没後70年ですので、IMSLPからのバイエルの楽譜ダウンロードは問題ありません。
教則本としてバイエルと肩を並べる『バーナム ピアノ テクニック』の著者エドナ・メイ・バーナム(Edna Mae Burnam, 1907-2007)は2007年没なのでまだパブリックドメインには登録されておらず、念のため確認しましたがIMSLPに登録は確認できませんでした。
IMSLPからのバイエルダウンロードに関する著作権の話の補足
楽譜コピーの著作権問題は、「楽譜コピー問題協会(CARS)」のサイトに詳しく載っています。
今回のIMSLPからのバイエル教則本ダウンロードは、「楽譜のコピーに関するQ&A」のQ9「古い時代の楽曲の著作権」の部分に該当します。
この記事は2020年8月15日に記載しています。著作権が有効な70年前というと、1950年、敗戦を迎えて5年、1952年のサンフランシスコ講和条約の前ですので、まだ日本が混合国軍占領下にあった頃ですね。
これ以降に発行されたと考えられる楽譜の入手は念のため注意しましょう。